今回も少し難しいお話ですが、安全な家に安心して暮らすために、とても大切なことです。これから家を建てる方だけでなく、一戸建てにお住まいの方もぜひお読みください。

編集部 今回のテーマは耐震検査ということですね。
稲 垣 先日、宝地町にあります私どものフラッグシップモデル『和伊の家』で、新潟県内初となる「木造住宅耐震起振診断実験」を行ったので、そのお話をさせていただきます。
編集部 なんだか面倒な名前の実験ですね。
稲 垣 要は実際の建物を少しだけ揺らして、その揺れ方をセンサーを通 じてコンピュータ解析するという検査です。
編集部 大手ハウスメーカーのCMで、実物の建物に阪神大震災と同じ地震力を加える実験の映像を見たことがあります。

稲 垣 あそこまで本格的に揺らす必要はありません。それに、CMの実験に使われている家は標準的な間取りであり、実際に皆さんが住んでいる家とは違います。地盤も違うし、色んな条件が違うはずです。
編集部 今回の検査は住んでいる家で行うところがポイントなんですね。どのようなことが解かるのですか?
稲 垣 その家は地震に強いのか弱いのか。弱いとすればどこが弱いのかまで解かってしまいます。

稲 垣 そもそも地震とは何なのか、ご存知ですか?
編集部 地球のプレート同士のゆがみで起こるんですよね。
稲 垣 では、地震の時、なぜ建物は揺れるのか知っていますか? 
編集部 「地震なんだからあたりめぇらねか!」という声が聞こえてきそうですが(笑)。
稲 垣 では、同じ揺れを与えた時に大きく揺れる建物と、わずかしか揺れない建物があるのはなぜなのでしょう? 
編集部 だんだん難しい話になってきましたね。
稲 垣 それは、建物それぞれの共振周波数が違うからに他なりません。地震力は周波数に換算できます。いわゆる波の形(Hz・ヘルツ)です。

 
編集部 建物が100あれば100通りの揺れ方をするということですね。
稲 垣 建物の周波数は、間取りや壁の位置、そして外壁や屋根の材料の違いでも異なってきます。言ってみれば建物の周波数は、その建物固有なわけです。では、その建物の周波数と地震の周波数が一致、もしくは極近い値だったらどうなるでしょう?
編集部 建物は地震の周波数に「共振」し始めます。
稲 垣 そうです。共振を始める周波数数値が少ないほど、地震発生直後から共振を始めますので、地震力を受けやすい建物=倒壊の危険があるということになります。言ってみれば今回実施した「木造住宅耐震起振診断実験」は、その建物特有の周波数を探る実験でもあるのです。地震力(地震波)の周波数の約80%は5Hz以下です。
編集部 ということは、建物の固有周波数が5Hz以下であると「危ない建物」になるのですか?
稲 垣 そういうことです。
編集部 では、実験方法について教えてください。
稲 垣 まずは45kgの錘を揺らして、震度2程度の揺れを徐々に建物に加えます(800ガルの一定加速度で2〜最大で10Hz)。その揺れをセンサーからコンピュータにデータを取り込み、震度7(激震)450ガルという阪神大震災並の地震下の状態に置き換えます。そして、建物の共振周波数とそれぞれの振動振幅(揺れる巾)を求めるのです。ちなみに建物重量 には、未設置の家具家電重量として15%、さらに積雪等の安全を見るために20%の安全率を加えてあります。
編集部 こちらが実験結果ですね。
稲 垣 私どもの『和伊の家』の共振周波数(共振を始める周波数)は、 『南北方向 9.08Hz』『東西方向 8.81Hz』でした。5Hz以上でかつ10Hzに近い値が理想的です。 変位振幅(振れ巾)は 『東14.7μ 西27.2μ 南17.6μ 北7.7μ 』でした。 この数値は50μ以内であれば安全とされています。
編集部 つまり、結果は理想的な数値ということですね。
稲 垣 試験機関の担当者の話では「この実験を始めて以来、全国で最高レベルの数値」ということでした。
編集部 それはすごいですね。
稲 垣 木造住宅の場合、柱と梁の接合部で10cm以上変位 すると倒壊すると言われています。この家はわずか3cmの変位 しかなかったので、極めて安全な数値といえます。
編集部 稲垣建築事務所では、安全の後ろ盾として「全棟構造計算」をしていますよね。
稲 垣 でも今回、実際に第三者から実験をしていただき、その結果 が計算に基づく安全性を確かに有していたと解かり、構造計算の重要性を再認識しましたね。
編集部 これから家づくりを考えている方にアドバイスすることはありますか?
稲 垣 安全な家で暮らしたいなら、とにかく建築屋さんやメーカーさんに「構造計算をしてください」と必ずお願いしてください。それがあなたの家の「安全の後ろ楯」となりますから。