雪国で暮らすということ

今回のテーマは親世帯と子世帯が同居する「2世帯住宅」です。
将来的に可能性がある方も、ぜひ参考にしてくだい。
イラスト
稲 垣
『2世帯住宅という住まい方』と題して3年前の12月に一度紙面を頂戴しました。あくまでも僕の感覚ですが、親世帯と子世帯が同居する2世帯住宅は増えているように思いますし、新潟県は2世帯住宅比率が高い地域だという統計結果もあります。そこで改めて2世帯住宅についてお話したいと思います。決してネタ切れなので以前と同様の話しでお茶を濁すつもりではありません(笑)。
 僕等でお手伝いする2世帯住宅ニーズで最近多いのは完全分離型。あるいは玄関とお風呂だけを共有してキッチンは分離といった部分分離型。完全分離型というのは玄関もお風呂やキッチンなどの水周りも、全てを世帯別に設けてどこか一箇所で内部の行き来が出来るという住まい方。世帯間であまり気遣いをすること無く、世帯のプライバシーはほぼ完全に守られます。用事が有るときだけ気軽に顔を出せるって感じでしょうか。
 部分分離型で最近お手伝いする機会が多いのは、玄関と1階お風呂のみを共有して他は分離する住まい方。当然大勢のご家族がひとつの玄関を使うことになりますので、広さもそれなりに必要になると同時に、玄関収納も大きめに必要になります。浴室は1箇所ですのでそのご家族なりに使い方のルール作りが必要になったりするのかもしれませんし、2階に小さなシャワールームを設置される方も少なく有りません。
編集部
以前稲垣さんが話した2世帯住宅の話しですごく興味深かったことがあります。『同居するのが息子の嫁なのか娘の婿なのかによって間取りすら違う』ということ。それはつまり暮らし方さえ違ってくるということなのですよね? 若世帯が嫁なのか婿なのかって話しと完全分離、部分分離という暮らし方の選択は関係あるのでしょうか?
稲 垣
経験則で申し上げれば違いはあると思います。まあ、お手伝いしたお宅でお婿さんというパターンは数が少ないので全てが当てはまるわけではないのですが、お嫁さんパターンの方が完全分離を選択される場合が多いように思います。お婿さんパターンに住まわれる二人の主婦は元々親子なわけです。あまり気遣いする必要がない。台所を共有しても問題は少ないでしょうし、むしろ親世帯のお母さんが毎日食事の支度をするってお宅も少なくないのでは? けれど住まわれるのが息子のお嫁さんであればお互いに気遣いする部分があって当然です。その辺の適度な距離感をつくるためにも完全であれ部分的なものであれ、分離型を選択される場合が多いのだと思います。住まい造りの主役は女性。特に"暮らし方"を決めるという根っこの部分こそ女性の意見を取り入れる。これは単世帯であろうが2世帯であろうが変わりません。つまり、女性の意見を優先させたほうが結果的に住まい造りはうまくいく。僕のこの想いは揺らぐことは有りません。

"本音"の打ち合わせが成功の鍵。

編集部
その話を聞いてから2世帯住宅に住んでいる知り合いにリサーチしてみたんですよ(笑)、職業柄興味がありまして。稲垣さんと同じでお婿さんパターンは一人しか居なかったのでサンプル数としては不足なんですが、やっぱり義母さんが食事の支度をしているらしいです(笑)。玄関もお風呂もキッチンも共有。別なのは洗面とトイレと洗濯機置場。やはり婿さんは書斎を欲しがっていました……本なんか読む人間ではないのですが(笑)。これも以前稲垣さんが言われていた、お婿さんの場合は男の居場所を確保するってことなんだなと実感しました。
稲 垣
2世帯住宅の設計をする際、僕は出来れば親世帯と子世帯、別々に打ち合せをした方が結果的に打ち合せの時間を浪費することが無いと思っています。お互い……特にお嫁さんやお婿さんは義理のご両親の前だと言いたいことが全部は言えないでしょうから。例えば予算的なことで玄関とお風呂を共有したいとご両親が言ったとしても、それが若世帯の希望かどうかはわかりません。本音は「玄関はいいけど、お風呂は別に……」と考えられているのかもしれません。本音で語っていただけない限り理想の住まい造りは実現できません。
編集部
僕が行ったリサーチで、2世帯だけれどまったく分離していないって人間も居れば、せっかく建てた家から親世帯が出て行ってしまった、あるいはその逆、なんて最悪のパターンもあるみたいなんですよね。
稲 垣
よく聞きますよね。2世帯で住むつもりだったのにどちらかがアパート住まいになってしまうなんて話。本音で打ち合せをしていれば結果は違ったのかもしれません。逆に、2世帯住宅だからって分離する必要があるのか?という考えも僕の中に少なからずあります。我が社の従業員で2世帯だけれど玄関はもちろんお風呂もキッチンも全て共有ってのが何人か居ます。本音はわかりませんが僕から見ているとすごくうまく家族関係が出来上がっている。で、最終的に僕が感じるのは本音で向き合うことなんだろうなと思っているわけです。ご家族間はもちろん、設計打ち合せの際も本音で向き合うことがご満足いただける住まい造りの出発点の様な気がしています。
 2世帯で住むということは、建物というハードその物よりも、住まわれるご家族がいかに家族関係を構築するのかというソフトの方が重要だと考えています。
 前回、2世帯住宅について触れたときと同じように、話を〆させて頂きますが、お互いが心からの「ありがとう」を言える関係であれば2世帯住宅の諸問題なんて無くなってしまうと信じています。努力はしていますが……僕には……無理かも……(笑)。
編集部
僕も無理かも(笑)。