緑の作法

今年は「緑のカーテン」と呼ばれるツル性植物が人気ですが、 今回はシンボルツリーとも呼ばれる庭木について考えてみました。
イラスト
稲 垣
前回、緑のカーテンで日射を遮る節電方法をご紹介しました。今回はその流れで家を彩る緑の作法についてお話したいと思います。
編集部
以前、一度だけ庭木の話をされたことがありますが、稲垣さんには珍しく得意分野ではなかったのでは?(ニヤリ)
稲 垣
少しずつですが勉強してるんですよ! さて、庭木と一括りにしますが、時代により、あるいは品種改良なんて言う理由からも流行の庭木は変わっていきます。まずは最近人気の庭木で、かつ僕が好きな木のご紹介を。

■常緑樹(1年中葉を付けて秋に落葉しない樹木)

◎シマトネリコ

葉っぱが小さくキラキラと輝きます。柔らかい雰囲気でシンボルツリーに使われることが多いです。寒さにも強く、樹木の形その物を楽しむ木ですので剪定も頻繁にする必要はありません。

◎ソヨゴ

常緑樹の中では珍しく花も実もなります。真っ赤な実です。風にそよぐとシャラシャラと音がするためこの名前になったといわれています。成長が遅く扱い易い木。

■落葉樹(秋に葉を落す樹木)

◎夏ハゼ

秋にオレンジ色に紅葉します。実は食用で、目の働きを助けるアントシアニンはベリー類の6倍も含まれているため和製ベリーと呼ばれます。

◎アオダモ

常緑のシマトネリコに似た涼しげな樹形や葉っぱの形をしています。花、葉っぱ、幹、紅葉、と一年を通して楽しめる木です。最近人気が急上昇だそうです。

◎ジューンベリー

これも人気急上昇。寒さにも強く、春には桜に似た真っ白な花が木を覆いつくします。6月ごろに実をつけますが「ベリー」ですので食べられます。紅葉も美しく大人気の理由は納得です。

◎エゴノキ

5〜6月に白い花を木全体に咲かせます。同時に柑橘系の香りを一面にただよわせます。幹肌が美しい木です。

稲 垣
他にもオオモミジ種のオオサカズキと言う名前のモミジは見事な真っ赤に紅葉するので好きですね。え〜……我が家には庭が無いので庭掃除をしたことが僕にはありません。庭掃除をしたことの無いお前が言うな!と怒られそうですが、僕は基本的には常緑樹より落葉樹の方が好きです。新緑の薄い緑色、夏の日差しを遮って、キラキラ光る葉っぱ、冬の到来を予感させる紅葉。この辺りは落葉樹でないと楽しめません。まあ、実際、庭掃除や冬の囲いは大変なんでしょうけれど……。
編集部
あまり聞きなれない木の名前が多い気がします。ちなみに……どの木も冬の囲いは必要なんですよね?(笑) どうも面倒くさくてねえ……。
稲 垣
ご紹介したのはシンボルツリーになりえる、どちらかと言うと高木の部類に入りますので、囲いは必要ですね。面倒に考えずに枝を縄でぐるぐる巻きに幹の方に寄せて雪が積もりにくくしてあげればいいんじゃないですか? もちろん木の大きさにもよりますが。そんなに嫌ですか? 僕も嫌ですが(笑)。

樹木は5Wで選ぶ。

稲 垣
樹木の選び方について、先日話をさせて頂いたガーデニングプランナーの方がすごくわかりやすい説明をされていました。基本的には5Wの考え方なんだそうです。WHY(なぜ)WHO(誰の為に)WHAT(何を)WHERE(どこに)WHEN(いつ)。これで5W。その方が言われていたのは第一印象で決めたらいいと(笑)。そんな……身も蓋もない……と、笑いながら聞いていたら納得しました。
 「いつ」というのは雪国では植える時期は限られてきます。「何を」というのも寒さに弱い木もありますからなんでも良いというわけにはいきません。けれど「なぜ」「誰の為に」「どこに」というのはあくまでも住まい手の第一印象でいいと。妙に納得しました。葉っぱを楽しむのか、幹を楽しむのか、全体的なフォルムが好きなのか。これは言葉では説明しづらく、好きだから、嫌いだからで決めていいのではないかということです。興味深かったのはその方が僕に『家相とか気にして設計されていますか?』と唐突に聞かれたんです。僕は基本的にはクライアントが気にすれば気にするし、気にしないなら僕も気にしないと答えました。笑いながら「私もまったく同じです」と答えられたので少し不思議になり聞いてみました。ガーデニングに家相があるんですか?と。その方は家相は無いけれど風水はありますよ、ついでに吉祥木(きっしょうもく)と忌み木(いみもく)という、昔から住まいの周りに植えていい木、悪い木なんてカテゴリー分けがあったんだそうです。その方はまったく気にしていないとおっしゃっていましたが。
編集部
あれ? その話どこかで聞いたことがあるような気がします……。たしか僕が聞いたのはビワの木を植えると病人がでるとか……だった気がします。
稲 垣
なんだ、知ってたんですか。吉祥木で例えればナンテンは「難が転ずる」、竹「真っ直ぐに伸び所々に節があり人生その物」なんて言葉遊びみたいなものが多いです。竹なんて無尽蔵に増えていくから厄介この上ないと思うのですけれどね。忌み木では、ツバキ「首が落ちるように花が落ちる」、ザクロ「実が裂ける=身が裂ける=病人がでる」、百日紅(サルスベリ)「寺に植える木=縁起が悪い」なんていう調子です。
 もちろんそういう言い伝えを気にされる方にとっては大問題ですから笑い飛ばすわけにも行かないのですけれど、言葉遊びで忌み嫌われた木はかわいそうですよね。風水的に言うと物凄い数の言い伝えがあるのだそうです。家の中心、つまり中庭の真ん中に木を植えるとその家は崩壊する……。おっかないでしょ?(笑) 気にする方は気にする、気にしない方は気にしない。それでいいんだと思います。
 さて、7月に入り本格的な節電サマーが始まりました。誰が悪いとか、原発は不要だとか言う議論はここでは置いておいて、生産活動を邪魔しないように、強いNIPPONを復活させるために各家庭でできることは協力したいですよね。先回の緑のカーテンもそうですが、庭先に、玄関の周りに、ほんの数本でいい。木を植えることでも陽の光は遮れるし、葉っぱの持つ蒸散作用で多少は涼しく感じるかもしれません。それよりもなによりも、木が一本も無いお宅より数本でも木が植えてあるお宅の方が見栄えがするし、何より住まい手の『らしさ』が見えてきますよね。