節電SUMMER

建築家としてではなく、体力勝負のボランティアとして 被災地支援に向かった稲垣さん。現地で感じたこととは……。
イラスト
稲 垣
一歩進んで二歩下がる……という昭和の大ヒット曲のように福島第一原発事故が目に見えて好転しません。環境先進国ドイツはG8の後、早々に脱原発を高らかに宣言しました。この国は……まあ……アレですね。アレがアレなわけですからアレですね(笑)。
編集部
まったくです。国会議員が政治ではなく政争している間、被災地が置き去りにされている気がしてなりません。せめて被災地の復興においては政党を無視して国民代表として動けないものでしょうかね。
稲 垣
僕はアレとしか言ってませんよ(笑)。けれど被災地の方々はボランティアが減少し始めていることだけでも、置き去りにされる、忘れられる、と不安を募らせているそうです。お気持ちはわかります。すべてを失ったのに何もしてもらえないんですから。
 さて、何かを期待しているだけでは何も始まりません。原子力は要らない!と声を上げたところで化石燃料の無いこの国では今の所ある程度は原子力に頼らざるを得ないのも理解しているつもりです。そんな原発が何基も停まって、電力不足が心配されている中、一般家庭では何が出来るのか少し考えてみませんか? 僕個人は冬の寒さも苦手ですが夏の暑さはもっと苦手。夜、寝ていても冷たい床を求めて気が付くとパンツ一丁で廊下で寝ていたなんてこともしばしばです(笑)。
 家庭で出来る節電。そんなに多くのことは考える必要は無いように思います。まずは『照明』。一般家庭での電力消費量は約16%です。一番手っ取り早いのは白熱電球をLEDに替える。これは恐らく劇的に電力量が下がります(あくまでも照明の消費電力のみを考えた場合)。ただ、LEDはまだまだ高価ですので、リビングやお風呂、トイレなど利用頻度が高いところから徐々に替えられてはいかがでしょうか。白熱電球は熱を出しますが、LEDはほとんど発熱しないため、冷房効率も良くなるはずです。そして照明で部屋全体を明るくしようとせず、必要なところだけ明るくするのも手ですよね。読み書きする場合だけスタンドを利用する。それ以外の時は、ほの暗さを楽しむ夏にしても良いのではないでしょうか。廻りが暗いと目が悪くなるというのは事実じゃないと医学会からも発表されていますし、今までの住宅は明る過ぎたのではないかと個人的には思います。テクニックとして、少ない照明で明るく見せるには壁を照らすことです(壁が白っぽい場合に限りますが)。そして、物心が付いて自分の部屋にテレビをお持ちの子どもさんでも、この夏はリビングに集まってリビングだけ照明もテレビもエアコンも点けるようにすれば、節電と共に会話も生まれていいですよね。節電で苦労するだけで終わるのではなく、暗さを楽しんだり、夕涼みを復権してみたり、家族の会話が増えていけば電気料金が抑えられる以上に豊かな生活になると思いませんか?

昼間の熱を貯めないことが重要。

稲 垣
家電製品の中で電力消費が多い代表格は『エアコン』。電力消費量は全体の25%にも及びます。つまりエアコンの使い方でかなりの節電が期待できるのです。冷房設定温度は28度。う〜ん……僕には耐えられないかもしれません……。けれど一般的に言われているのは28度設定にして、消費電力が少ないタイプの扇風機を併用すると節電効果が高いといわれています。エアコンの室内機には必ずホコリ等を吸いこまないためのフィルターが付いています。このフィルターのこまめな掃除も節電に繋がります。フィルターを掃除機で吸うだけです。それ程面倒なことではありません。見落としがちなのは室外機の方。室外機の廻りを植木鉢などで塞がないようにしてください。室外機の廻りの温度が上ってしまい極端に効率が落ちてしまいます。また、ベランダの床等に室外機が置いてある場合も同じことが言えます。ベランダの手摺が格子状で開放されていれば問題ありませんが、腰壁状になっていると排熱がうまくいかず、やはり効率は大きく下がります。ちなみにほとんどのエアコンは冷房運転の方が除湿運転より消費電力が少ないので、よほどジメジメしていない限り、除湿ではなく冷房運転をお勧めします。
 次に『冷蔵庫』。冷蔵庫の消費電力は一般家庭の16%。冷蔵庫内の設定温度を少し上げてみるだけで消費電力は下がります。また、言うまでもありませんが必要以上に詰め込まないようにします。冷気の通り道さえあればそれ程キンキンに冷やさなくても目的は達成できます。壁から少し離して設置するのも手段ですし、冷蔵庫のドアについているパッキンの手入れをしたり、そもそも必要の無いものは冷蔵庫に入れない、なんてのは当たり前のことですね。
編集部
夏の我が家の冷蔵庫はキンキンに冷えたビールが半分以上を占めます。考えながら、その日飲む分だけを冷やすようにします(笑)。
稲 垣
ビールは僕にとっては悪魔の水、この世から無くなってもらってもまったく困らない飲み物のため、我が家の冷蔵庫にビールが入ることはまったくといって良いほどありません(笑)。
 家電製品は簡単な発想の転換や、手入れや使い方で節電できると考えています。ただ、それだけでは足りないんですよね。一般家庭で一番やらなきゃならないのは昼間の太陽の熱を貯めないということなんだと思います。つまり、陽の光で室温を上げない工夫が必要です。具体的には(この「まるごと生活情報」がお手元に届く頃では少し遅いかもしれませんが)、日差しの強い方向の窓の外にゴーヤやヘチマやアサガオを植えて(あるいはプランターでも代用できます)緑のカーテンを作る。これはある程度陽も入りますし、視線も抜けます。植物が持つ蒸散作用による効果と、直接熱を室内に入れないという点で大きな節電効果が期待できます。ホームセンター等でゴーヤの緑のカーテンの栽培セットが売られていますのでお試しください。ちなみにゴーヤですから、大きくなれば食べちゃえます。同じ効果が期待できるのは窓の外にスダレを下げる手もありますが、風が強く吹くとスダレがバタついたりするので少し面倒かもしれません。リビングの大きな掃出しの窓には「オーニング」をつけてしまうのも効果的だと思います。オーニングというのは格納できるテントと考えて頂ければいいでしょうか。カフェの店先などにありますよね。オーニングは日差しを遮ると言う目的が無い場合は格納できますので、外観上もスマートです。
 近いうちに屋根の塗り替えを検討されている方は、是非、遮熱(しゃねつ)塗料を使ってみてください。わずかなコストアップで、かなりの熱が遮断できますので、結果的に節電に繋がっていきます。僕はその効果を体感済みです。昨年の今頃、自宅の屋根を遮熱仕様に替えたのですが、夕方の自室に入ったときの熱気は一昨年と昨年ではまったく違うものでした。
 一般家庭の消費電力はエアコン、冷蔵庫、照明、テレビの順に高いです。いかに電力を使わずに涼しさを得るかがこの夏の節電の目的です。暗さを楽しむ、日差しを避ける、家族で一緒に居る。節電も悪いことばかりじゃ無い気がしてきませんか? みんなで楽しく、節電しましょう。