住まいの儀式(とその費用)

一般に家を建てる時には2つの大きな儀式があります。一つは地鎮祭、もう一つは上棟式です。
今回はその中身について教えてもらいます。
イラスト
稲 垣
住まいを新築、増改築する時、様々な儀式とか、やっておかなければならないことがあります。今回はそんなお話を雑談風に進めて行きたいと考えています。ここでご説明するのは一般的にはされている方が多い儀式ということであって、絶対にしないといけないものだとは思っていませんし、建築屋さん独自の式典みたいなものは語りません。
編集部
儀式、と言うと堅い感じですが、地鎮祭や上棟式ですよね。"わたませ"なんてのもあったかな。意外と知ってるでしょ?
稲 垣
編集さんから"わたませ"なんて言葉が出てくるとは思いませんでした。伊達に歳とってないですね(笑)。判りやすいように時系列に添って進めましょうか。どなたでもご存知のはずの地鎮祭(ぢちんさい)。住まい造りのスタートです。でもその前に、儀式ではありませんが、やっておかなければならないことがあります。建て替えなら古いお宅の解体工事着手前に、更地新築でも地鎮祭当日には、ご近所へのご挨拶は済ませてください。住まい造りはお互い様ですが、振動や騒音等でご迷惑をお掛けするのは明白です。ご挨拶の時の粗品は、それこそお互い様ですのであまり気にされることもないと思います。近々にご近所で工事をされた方がいらっしゃれば、その方のご挨拶の物と同等と考えればいいかと。ちなみに私どもの場合は最初のご挨拶にお客様とご一緒させていただき、建築屋としてご近所にご挨拶させていただきます。
 また、お仏壇があるお宅の建て替えの場合、お仏壇を動かす前にお経をあげていただくお宅が多いです。僕もあやふやな知識で申し訳ないのですが、お仏壇を移動する際の法要として、これも"わたませ"と呼ぶ…らしい…(間違っていたらごめんなさい)。ただ、この段階では"法要"と呼ぶほど大袈裟ではなくお経だけあげるという方がほとんどです。
 そして解体工事が終わり更地に戻ると地鎮祭。地鎮祭は神事なら神主様に、仏事ならお寺様に、土地のお払いをお願いするわけです。別にどちらでなければならないということはありません。私どもの場合、お客様の指定がなければ、いつもお払いをお願いしている神社の神主さんにお願いします。その場合、お客様にご用意いただくものは二つ。一つは日本酒。熨斗紙に「奉献酒」または「御神酒(おみき)」と書いたものを一升だけご用意いただきます。そして『初穂料』。昔はお金の代わりにお米を初めとする農作物を差し上げたという習慣から、農作物からお金に変わった今でも呼び名だけが残ってこの名称です。白赤の蝶結びの熨斗袋に入れてください。金額は……私どもではどのお宅でも同じ金額を入れていただいていますが、神主さんが建築屋によって違う金額を言っていると悪いので伏せます(笑)。ただ、驚くほどの金額ではありません。神社やお寺によっては四隅に立てる青竹やお供えもこれとこれ、と指定される場合もあるのですが、私どもがお願いする神主さんはお供えその他はすべてご用意くださいますので、初穂料と日本酒のみです。これはお願いするところによって大きな違いがあると思われますので確認お願いします。ここまでが地鎮祭までの流れです。ちなみに、建て替えの場合、敷地の四隅をお払いしていただく際に、旧宅のトイレ水周りのだいたいの位置もお払いしてもらいます。トイレなどは不浄の場所と言われていますから。
編集部
ははぁ……僕も家を建てる時、初穂料って一体どんな意味なんだろうと思っていました。なるほどね。収穫の時期に取れたてのお米を差し上げるから初穂かぁ。なんか日本語って綺麗ですね。我が家の地鎮祭、おぼろげながらの記憶ですがお供えも「海の物・山の物」と言われて自分で用意した記憶があります。関係ないですけど御神酒と書いて「おみき」と読むんですね(笑)。知りませんでした。

ご近所に喜ばれる"餅撒き"はお勧め!

稲 垣
儀式としては地鎮祭が終わると上棟式です。建て前ですね。この時も神主さんをお呼びしても構わないのですが、通常は大工棟梁が神主役を務めます。地鎮祭の時は敷地のお払いが主ですが、上棟式の場合はお祝いです。いわゆる祝詞(のりと)をあげます。慣れてはいても、にわか神主ですので本職のように流麗とは読めませんけれど。お供えはお客様にご用意いただく場合と、代行でご用意する場合がありますが、金額は数千円です。ちなみにお供えはにわか神主の棟梁がいただきます。
 そして、最近ではめっきり少なくなった餅撒き(餅投げと呼ぶ地域もありますが)。これはお客様のご意思で、されるかされないかを決めていただければいいと思います。私どもの場合、一生の内そう何度もないであろう機会ですのでお勧めはいたします。最近少なくなったが故に、ご近所の方々、特に子ども達からは喜ばれますし、お客様にお子さんがいらっしゃれば何より一番喜んでくれるはずです。私どもはお供えをご用意いただく代わりに……と言っては生意気ですが、餅撒きする際の御餅、お菓子はすべて私どもでご用意いたします。住まい造りの大きな節目で思い出にもなりますから。それこそ雨あられのように撒きます(笑)。
編集部
上棟式で"儀式"は終わりですよね?
稲 垣
はい。私ども建築屋がお手伝い出来る儀式は地鎮祭と上棟式だけです。そして、工事が終わり、新居に引っ越されますと、お仏壇のあるお宅であれば先ほどの"わたませ"ということになります。ちなみに"わたりませ"と呼ぶこともあります。僕も最近まで"わたませ"と言うのはご先祖様の法事と新築祝いを一緒にやることだと思い込んでいましたが、意味は違っていて、お仏壇を新しい住まいに移した後にする入仏法要なんです。
 でも、実際には新築後すぐにはお経だけあげていただいて、わたませ法要は少し先の法事と一緒にするお宅の方が(僕の経験では)多いと思います。何度かわたませ法要にお招きいただいたことがありますが、その時にお寺様に「わたませと言う入仏法要をして、初めて家になる。法要前はただの小屋だ」なんてことを言われ、若かりし僕は"カッチ—ン"と来たのを覚えています(笑)。歳を重ねるごとにお仏壇の持つ精神性が少しだけわかるようになり、理解しました。
編集部
こういった儀式って、お金を掛けようと思えばいくらでも掛ってしまうし、人並みでいいと思えば大した金額は掛らないものですよね。僕もそうでした。けれど、建築屋さんって色んなこと勉強しなければならないんですね。
稲 垣
勉強と言うか、自然と知ることは多いですね。ただし、今回僕が話した、特に仏事においては若干の間違いがあるかもしれません。あらかじめお詫び申し上げます。間違っていたらごめんなさい。