フィクション:家造り物語1

フィクション=架空の物語……ということですが、 なんだか妙にリアルな感じがするのは気のせいでしょうか?
イラスト

30代前半のAさんご夫妻が家造りを目指して土地探しを始めます。幼いお子さんが3人。既にアパート暮らしでは手狭になり家造りを考えられました。 希望の土地条件は
1お子さんのため、小学校区が変わらないこと。
2将来的な親御さんとの同居のための増築スペースも考えると土地面積は最低50坪。
3出来る限り正方形に近い土地がいい。南向きであればなおさらいい。
4土地価格1000万円以内が希望だが無理そうなので出来るだけ安い土地。
ざっとこんな感じです。
 しかし、希望の小学校区は市内でも坪単価が高い地域で、かつ古くからの学区で分譲地はないに等しく、たまに売り地があったとしても昔の区画割ですから50坪に届きません。さらに古くからの町並みが形成されていますので、ご近所付き合いも成熟している中に新参者として飛び込む勇気もあまり持てない。希望をすべて叶える土地に巡り合えるのか厳しい状況です。ではAさんはどうするのか、どうしたらいいのか……。

編集部
フィクションにしては具体的ですね。僕は子どもが就学前に家を建てたので、小学校区とかで悩むことはなかったですね。僕の場合の土地の希望条件ってあったのかな? 唯一あったのは、やっぱり古くからの町並みの中に飛び込むのは躊躇しました。
稲 垣
若い方が住まい造りをされる時、まず土地探しから始めなきゃならないって方も多くいらっしゃいます。当たり前の話ですが土地がなければ家は建ちません。土地を決めるということは、住まい造りにおいて最初の大きな決断です。一時期、長岡市内には大きな住宅分譲地が見当たりませんでした。
中越地震以降に、売れ残っていた分譲地が一気に埋まってしまったという特殊な事情もありましたが、最近は長岡市郊外に大き目の分譲地がいくつか開発されています。
編集部
そうですね。長岡市も外れの方なので価格も抑えてあってお手頃感はありますね。
若い方はやっぱり新興住宅地を好む傾向にあるのでしょうか?
稲 垣
それはその通りだと思います。どんなに希望通りの土地でも、Aさんや編集さんのように古い町並みの中に自分達家族が新参者として入っていくのは勇気がいると思います。
新興住宅地なら新参者と古参〈失礼(笑)〉の区別がないですし、町全体のおおよその平均年齢も推測できますから。自分達と同年代の方々が多く暮らす町であれば気が楽だと思うのは大いにあると思います。  さて、前述のAさんの希望。将来的な家族構成まで考えて土地の面積に当たりをつけるのは正しいことだと思いますが、一つ注意してください。
家が建てられる(農地とかでない)土地のほとんどは市街化区域という区域内にあり、その中でも用途地域というのが決められています。低層の良好な住宅地を目指す『第一種低層住居専用地域』から、工場等の専用として捕らえられる工業専用地域まで色々あります。
詳細の説明は避けますが、ここで重要なのは建ぺい率と容積率。う〜ん文字だけで説明しようとすると誤解が生まれそうですが、建ぺい率は土地の広さに対する建築面積の上限値。第一種低層住居専用地域の建ぺい率の多くは50%。つまり土地が50坪だとしたら、建物の建築面積はその50%の25坪が上限になります。建築面積とは……これも説明しづらいなぁ……ものすごく乱暴な言い方ですが、1階の面積と考えてください(本当は違います)。
 建ぺい率と同じくらい注意しないといけないのは容積率。第一種低層住居専用地域の容積率の多くは80%です。つまり50坪の土地にその80%の40坪の建物(延べ床面積)しか建てられないことになります。Aさん家族は40坪あれば親子5人と将来的な親御さんとの同居にも対応できるギリギリの面積だと思いますが、自分の土地だからって、好き勝手な建物は建てられないのでご注意くださいね。

土地を決める優先順位

稲 垣
さて、話が若干逸れました。まずAさんの希望では土地は見つからないとします。ではどの条件を一番に削るべきなんでしょう? 
僕が優先順位を付けるなら1-4-2-3の順。3の土地の形や方位に対するこだわりはまず捨ててくださいとお願いします。1の小学校区はお子さんのことを考えれば優先させてあげたい。価格と土地の広さはお互いにリンクしますね。狭ければ安い。広ければ高い。当たり前ですね。投機目的で土地を買うわけではなく、あくまでも住まいを建てるために土地を探していらっしゃる訳ですからお金も大事。広さも大事。けれど一番大切なのは家族みんなが満足できる選択なんだと思うのです。たまに土地を何年も探して、疲れ果てて住まい造りを中座するなんて方もいらっしゃるんですよ。僕は土地探しが目的に変わってしまっては駄目なんだと思うのです。その土地にどんな住まいを建ててどんな暮らしをしたいのかイメージして欲しいと思っています。
 土地の広さや形や方位は怖くない。それは建築屋が考えることです。そういった意味で是非土地探しの途中でも意中の建築屋さんに相談してみてください。土地探しの途中に建築屋さんに相談したら『土地が決まったらまたご相談ください』では建築屋失格です。そんな建築屋さんは今の時代はいないと思いますが。建築屋ならその土地にどんな住まいが可能なのか、ご家族の想いを形に出来るのか、ご要望を聞き、その土地(敷地)の真ん中に立って敷地に聞いてみれば自ずと形は見えてくると思っています。
編集部
なるほど。ご家族のプライベートな事情以外の問題は建築的になんとか解決出来るかもしれないということですね。新興住宅地ではない所に土地を求める場合他に注意すべきことはありますか?
稲 垣
僕の友人の不動産屋さんが言っていたことなんですが……購入を検討する土地の南隣の方に暮らしやすさとか、騒音、それから大雨が降ったときに周りがどうなるのかを聞いたほうがいいらしいです。北隣の方に聞くと、そのお隣さんから見れば南側の空き地に家が建ってしまう可能性があるわけですので割りとネガティブな話の割合が多くなる(笑)。
ホントかよと思っていましたが、程度の違いこそあれ、案外本当のことのようです。土地探しは住まい造りの第一歩。積極的に建築屋を巻き込みましょう。
 最後にAさんに対するアドバイスをまとめます。チビちゃん達の小学校区を変えたくないという考えには賛同します。ただ、土地の形とか方角とか、面積もあまりこだわらないでください。将来的な家族構成から最低の土地面積はイメージできますし、目指す暮らし方をお教えいただければ形や方角はあまり重要でないことがわかっていただけると思います。
編集部
なんだか……本当にフィクションですか? 実際にAさんは実在するんじゃないですか?
稲 垣
Aさんは実在すると思いますよ。これを読んでいただいている方の中にも同じように土地探しに悩まれている方は少なくないはずですから。
編集部
綺麗にまとまったところで、恐らくはAさんを主人公とした住まい造り物語は、フィクションなんだかノンフィクションなんだかわからないまま進んでいくと思われます。