白熱灯・蛍光灯・LED

今回のテーマは家庭の灯りです。 白熱灯がなくなるという噂は本当なのでしょうか?
イラスト
稲 垣
大手家電メーカーが相次いで生産中止を発表している製品があります。恐らく編集さんの家にもあるはずの物。なんだかわかりますか?
編集部
はい。VHSビデオデッキでしょう? 既に無用の長物ですよね。
稲 垣
VHSビデオデッキが生産中止になるのかどうかはわかりませんが、僕が言う製品は違います。白熱電球です。白熱電球は今はまだほとんどのお宅の照明器具に使われていますよね。硝子球の中のフィラメントを発熱させることで灯りを得る仕組みです。白熱電球の生みの親はエジソンであることは有名ですし、大昔のフィラメントは京都の竹を炭にしたものが使われていたという話を聞いたことがあります。  ではなぜどこのお宅で使われているような白熱電球が生産中止になってしまうのか。大袈裟に言えば「地球温暖化の抑制」のためです。環境先進国のドイツではすでに白熱電球は生産されていませんし、写真撮影とか、どうしても白熱電球の灯りでなければならない場合を除いて使用も禁止する方向だったと思います。
編集部
地球温暖化の抑制ですか、電球で? 流行のLED照明にしろってことでしょうか?
稲 垣
いきなりLEDと比べるのは置いておいて、まず蛍光灯と比べましょうか。白熱電球の寿命は蛍光灯の約1/6。消費電力はなんと3倍を超えます。価格は白熱電球の方が安いのですが、寿命と消費電力を考えると蛍光灯の方が財布に優しいとこになります。さっき編集さんがいわれたLED電球にしたら電球の交換は10年近くしないでもいいかもしれませんが、いかんせんまだまだ価格が高い。電球一個に5000円払います?
編集部
う〜ん……やはり考えますね。
稲 垣
古くはタイマツ、ロウソクやガス灯などの火で灯りを得る時代を白熱灯が終わらせたように、白熱灯の時代もLEDの出現で終わりを迎えるのかもしれません。淋しいですよね。寿命と消費電力を考えれば白熱灯は地球環境に優しくない。蛍光灯にもLEDにも「電球色」と言われている白熱灯独特の赤い灯りを模造した製品はあることはあります。ただ個人的には白熱灯の灯りの暖かさは白熱灯にしか出せないと思っています。電球色の蛍光灯やLEDではどんなにがんばってもあの暖かさは演出できない。しかし、時代が白熱灯の次を望んでいるなら生産中止もやむを得ないことなんだろうなとは思っています。

蛍光灯と比べてコストは24倍!?

稲 垣
白熱灯に関してよく誤解されている方がいらっしゃいますが、60W、100Wとワット数が表示してあるじゃないですか。ワット数は明るさの単位ではないので明るさを示している数字ではありません。Wは消費電力です。一番ご理解いただけるのは同じW数の白熱灯と蛍光灯を比べるとわかります。同じワット数ですから消費電力は同じです。けれど蛍光灯の方が白熱灯に比べ4〜5倍は明るい(もちろん電球そのものだけでなく照明器具によっても変わります)。  逆に電球その物のワット数ではなくその部屋に必要な明るさを確保するには蛍光灯と白熱灯ではどれくらい違いがあるのでしょうか? 照明器具のカタログを見れば一目瞭然ですが、例えばシーリングライト(天井に直付けの照明器具)、部屋の大きさは8〜10畳とします。蛍光灯照明器具ですと90W、白熱灯照明器具ですと360Wが必要になります。消費電力はちょうど4倍。さらに先ほど申し上げたように白熱灯は蛍光灯に比べて1/6の寿命ですから、4×6=24倍。実に白熱灯の方が24倍もコストが高いということになります(あくまでも机上の計算だけですが)。
編集部
24倍ですか!? それは無視できない数字ですね。けれど今まで話を聞いていると白熱灯がなくなるのは淋しいと言ってみたり、データでは白熱灯の負の部分を言われる。稲垣さんはどっちの味方ですか?(笑)
稲 垣
味方とかそういうことではなくて白熱灯でしか出せない味が存在すると言いたいんです。白熱灯には白熱灯にしか出せない演出ができる。それは電球色の蛍光灯やLEDでも出せないはずなんです。地球温暖化の抑制とか消費電力とか、電球その物の寿命の短さとかで白熱灯が追い込まれているのは仕方ないと思えても、だからといって全部なしって言うのは極端な話だなと思うわけです。
編集部
僕もこれくらいは知っていますが、蛍光灯やLEDの元々の灯りは白っぽい。だからわざわざ加工を施して蛍光灯にもLEDにも白熱灯に近い赤っぽい色を作っているんですよね?
稲 垣
その通りです。白い灯りと赤い灯りは部屋の用途によって使い分けしたいところです。家造り真っ只中、あるいはこれから家造りを始める方には参考にしていただきたいのですが、蛍光灯の昼白色、LEDの白色等、白い灯りの方がいい部屋は子ども部屋などの活動的に目を使う部屋、それと洗面所、ウォークインクロゼット、キッチンの流し元灯など色をはっきりと見分けられたほうがいい部屋。逆に電球色の蛍光灯、LED、そして白熱灯などは光が赤っぽいので雰囲気を大切にしたい部屋、陰影を出したい部屋、くつろぎの部屋、等です。例えばリビング、ダイニング、寝室、客間なんかもそうでしょうね。ただ僕が照明器具を選ぶと全体的に赤い灯りが多くなってしまいます。これは男目線なのかもしれませんが、夜、家の中から白い光が漏れ出しているのと、赤い灯りが漏れているのを想像の中で比較していただくと、当然、赤い灯りの方が暖かく感じます。外から帰ったときに家から漏れる灯りでホッとできるのは大切なんではないかなと思います。
 蛇足ですが、僕の知り合いの某会社の事務室の照明を全てLEDに替えたんだそうです。そしたら事務員さんが気分が悪くなったという話を聞きました。LEDには製品誤差ではっきりと認識できないちらつきが出ることが、稀にはある様です。そのちらつきが気分を悪くした原因ではないかと思っています。けれど、何十年か後、ひょっとしたら数年後、今はまだ高価なLEDが蛍光灯の価格くらいまで下がれば、次は蛍光灯の存在価値も危ぶまれてしまうかもしれません。  う〜ん……本当は電球の話に終始するのではなく、「多灯照明のススメ」みたいなことをお話したかったのですがいつの間にか電球オンリーになってしまいました。僕が考える照明計画で優先させるべきものの話は次回以降にとっておきます。