住まいのしきたり

好評の『住まいを○○から考える』シリーズ第3弾。 床、間取りに続き、今回は「建具」がテーマです。
イラスト
稲 垣
建具と言うとあまり一般の方にはなじみのない言葉なのかもしれませんが、建具とは外部と内部を繋ぐサッシ、玄関のドア、玄関引戸も建具ですし、内部と内部を繋ぐドアや引戸、収納の扉も全て建具です。今回は住まいを建具から考えてみようかと思います。現在話題の住宅版エコポイントに絡むリフォーム工事でも一番簡単にポイントをいただけるのは、既存のサッシの内側にプラスチック製のサッシを取り付ける、断熱内窓工事です。これも建具の一種ですね。
そんなので断熱性能上がるの?と思う方も少なくないと思われますが、窓だけの性能で見れば断熱性も防音性も格段に上がります。ただ、窓だけ断熱化しても壁や天井、床の断熱材が入ってないなんてお宅では断熱内窓を付けても断熱性が格段に向上したとは思えないかもしれません。
ちなみにエコポイントの上限は300000ポイント。1ポイント1円換算ですから上限30万円になります。内窓設置、あるいは外窓交換の場合は窓の大きさによってポイントが違ってきます。参考として、
●窓面積(大)2.8u以上    18000ポイント
●窓面積(中)1.6〜2.8u未満  12000ポイント
●窓面積(中)0.2〜1.6u未満  7000ポイント
になります。
 内窓取り付けの場合だけに限ればおおよそ工事費の半額がエコポイントで戻るといった感じでしょうか。
編集部
伸び伸びになっていた話題も今となっては逆にタイムリーな話題になりますね。
稲 垣
住宅版エコポイントの話がしたいのではないのですけどね。昔の日本家屋は外と内を繋ぐ建具も内と内を繋ぐ建具も引戸が中心でした。と言うより、お金持ちの大きな蔵の扉などは例外的にドア形式のものもありましたが基本的には引戸しかありませんでした。
それがいつの間にかドアに変わっていきます。  これも一種の住まいの欧米化なのでしょうか。サッシと内部の建具を区別しないと話がわかりにくくなりますので内部の建具に限定して話を進めます。内部の建具の供給先としては各建材メーカーと建具屋さん。
建材メーカーの分厚いカタログにはものすごく多くのデザインの扉が並んでいます。メーカーの本音としてはデザイン種類を減らしたい、滅多に売れないデザインを廃盤にしたいと、ほぼ全てのメーカーさんが思っているようです。
けれど廃盤にはできない。なぜなら他メーカーが廃盤にしないから。先に止める訳にはいかないらしいです。僕個人的にはメーカーの既製品建具の6〜7割のデザインは要らないと思っています。
編集部
ずいぶん乱暴な……(笑)。でもそう思われるのはなぜですか?
稲 垣
もちろんメーカーのプライドとして他メーカーが持つデザインは自社でも持ってないとエンドユーザーから選択されないのではないかと言う恐怖は理解できます。
が、僕が要らないと思うデザインは意味もなく懲りすぎている。建具が自己主張しすぎているんです。僕は建具には2種類あって自己主張があってもいいと思う箇所につける建具と、逆にその存在すら意識させたくない建具とあると思ってます。例えば玄関先からリビングの入口が見えるとします。来客にも当然見えるわけですからそこはある程度の自己主張があってもいいと思います。
が、その家に住まわれる方の自己主張が既製品でかつ、奇をてらったようなデザインである必要はない。そこだけは打ち合わせを重ねて建具屋さんにオーダーしてもらいたいところです。
で、個室やその他の入口なんかは可能であれば建具の存在すら消してしまいたい。主役は空間であって建具ではないわけです。そう言った意味で本来は全て引戸にしたいと思っています。もちろん引戸の場合引いていく壁が必要なので間取りによっては全てを引戸にはできませんが、個室以外の建具、つまり家族全員が使う建具は引戸が基本。
要所は天井まで高さのある建具にして引戸を開けた時には下がり壁も何もないオープンな空間にしたいですよね。だからなおさら、これからの時代は今までメーカーの既製建具に押されて苦境に立たされていた建具屋さんの出番だと思います。
デザインや質感が重要視される時代。
稲 垣
例えば障子。まったく同じ木を使って同じデザインにしても、障子骨の太さを少し変えただけで印象はガラリと変わります。もちろん骨の入れ方を変えればもっと劇的に印象が変わります。存在感を出すのも消すのもデザインさえ間違わなければ建具屋さんなら自由自在です。
これからは既製品ではなく、そのお宅だけの建具デザインや質感が重要視される時代だと思っています。本物の無垢の木で造るのか、フラッシュと呼ばれる造り方をするのか、レバーハンドルは?引戸であれば手掛けは?骨の入れ方は?なんて考えていると楽しいですよ。
他とは違う我が家だけのオリジナルを探す作業ですから。ああ、誤解のないように言いますが、メーカーの既製建具を否定するつもりはありませんし、僕はこれからも使うと思います。
あくまでも自己主張のないデザインを選んで。
編集部
我が家は某建材メーカーのドアがほとんどで、和室の障子や襖だけ建具屋さんから造ってもらったはずです。ですが引っ越して間もなく建具屋さんで造ったものだけが動きが悪くなって……既製品の方はこれといった不具合はないのですが……。
稲 垣
基本的に既製品は工業製品で表面が本物の木ではありません。建具屋さんの造る障子や襖は本物の無垢の木で造られています。本物だから不具合が出ていいとは言いません。
けれどその建具になった木が、一生懸命編集さんのお宅の一員になろうと編集さんちの空気に慣れようとした結果だと思いますよ。動きが悪くなった建具も直してもらえばなんら不都合はないでしょ?
編集部
ええ、直してもらって以後はまったく不都合は感じません。ああ、そう言えば地震で物が倒れて大きく傷ついた既製品のドアも建具屋さんに新品みたいに直してもらいました。その際に既製品のドアの建て付けも全部調整してもらったり……。
稲 垣
どんなに住まいの考え方が変わっても職人と呼ばれる職種で不要な職種なんかないんですよね。なんか表題のタイトルから少しずれて「住まいを建具屋目線で考える」みたいになってしまいました(笑)。僕がお願いしている建具屋さんの若社長におめでたいことがあったばかりなのでご勘弁ください。