住宅瑕疵担保履行法

漢字が続いて、とても難しそうなタイトルですが、 重要なお話なので、住宅を建てる予定のある方はよくお読みください。
イラスト
編集部
住宅瑕疵(かし)担保履行(りこう)法? かすかに名前は耳にした覚えがありますが、難しそうですね。
稲 垣
名前は難しそうですが、大して難しくないですよ。でも法律ですからね。
簡単に説明するつもりでもわかりにくいところがあったらごめんなさい(笑)。そもそも瑕疵(かし)とは何なのか、どういう意味なのかを先にご説明します。瑕疵とは法律用語です。平たく言えば欠陥、欠点がある状態を瑕疵と呼びます。取引上、普通に要求されて当然の性能を満たしていない状態=欠陥、欠点と考えます。
例えば雨漏りなんかも、屋根の防水性は「要求されて当然の性能」ですから、雨漏りがした時点で瑕疵の状態になるといえると思います。この法律自体は住宅事業者に瑕疵担保責任を負わせる法律ですね。
平たく言えば、瑕疵担保責任とは瑕疵(欠点・欠陥)があったら直す責任があるということですね。当たり前な話ですね。
編集部
なるほど。瑕疵(かし)なんていうと一般に使う用語ではないから難しそうに感じますが、平たく説明してもらえるとわかりやすいです。
稲 垣
本年10月1日付けで、住宅瑕疵担保履行法が施行されました。この法律ができたわけ。
たぶん……なんていい加減で申し訳ありませんが、マンションやビジネスホテルで起きたあの「耐震偽装」が引き金なのは間違いありません。耐震偽装の被害者である住民の方々は夢のマイホームを手にして間もなく偽装が明らかになり、その上、間もなくマンション販売業者が倒産したため、なんの保証も受けられないまま、二重の負担を背負うことになったわけです。  ああいった悲劇を繰り返さないために、住宅事業者に資金確保を義務付ける法律なんです。
瑕疵が発見されたときに、住宅事業者が無償で瑕疵を解消しなければならない、つまり無料で直さなければならない。けれど、その時点の事業者に資金の余裕があるかないか、あるいは大袈裟に言えば事業者、つまり会社自体があるかないか、なんの担保もないわけですので、それなら保証金を積むか、保険に加入するか、万が一瑕疵発生の際にも資金確保ができるようにした法律ですね。例えば、編集さんの家に瑕疵が見つかったとするじゃないですか。
普通なら瑕疵の解消に必要な金額(もちろん免責等々ありますがここでは割愛します)を事業者が受け取って瑕疵を解消する。つまり無償で直すわけです。
編集部
ちょっと待ってください。直すお金を事業者が受け取るのであれば、その時点で耐震偽装事件と同じように事業会社が倒産してなくなっていたらどうなるんですか?
稲 垣
その時に新築工事をお願いした会社が倒産していたら、施主、つまり編集さんに支払われます。ただ、誤解していただきたくないのは、すべての不具合が対象にはならないという点です。
対象は、住宅の構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分です。構造耐力上主要な部分と言えば、基礎とか、土台、柱、筋交いみたいな耐力壁、等々家を支えている部分。雨水の浸入を防止する部分は屋根、外壁、サッシ等になります。内装で、例えば床が鳴るとか、壁紙にシワがよったというのは対象外になります。
編集部
そりゃそうですよね。壁紙が10年目でシワになったから直せなんて言われても、形あるものが未来永劫に渡って原型を留めるわけないですからね。

10月1日以降の“引渡し”が対象
稲 垣
忘れられがちなのは、10月1日施行というと、それ以降に着工する住宅が対象のように感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、10月1日以降に引渡しになるお宅はすべて対象です。
着工がいつかは関係ないのです。引渡しが10月1日以降であればこの法律はすべての住宅を対象としています。土地を売買されたことのある方はご存知のはずですが、不動産の売買の際には、「重要事項説明書」という書面を不動産売買の仲介業者が細かく説明しなければならないことになっています。
住宅瑕疵担保履行法では例えば新築住宅の契約の際に不動産売買と同じく、住宅瑕疵保険、あるいは保証金(後で説明しますが、本当は供託金と呼びます)について重要事項を説明しなければならないとしています。
ですので、10月1日以降の引渡し住宅の契約時、普通に考えれば遅くとも5月とか6月くらいでしょうか。
この時すでに保険か保証金についての重要事項の説明をしなければならない、逆に施主さんから考えれば、何ヵ月も前に重要事項の説明を受けていなければならないのです。
編集部
先ほどチラッと言われた、「保証金を積むか保険に加入する」と言うのはどういうことなんですか?
稲 垣
まず、保証金は供託金と呼ばれています。供託金は事業者が資金確保を明確にするために事業者の年間住宅供給戸数に応じて国、具体的には法務局に10年間お金を預ける制度です。
例えば年間100戸供給の事業者なら供託金1億円。ま、僕らみたいな小さな地場の建築屋はそんなお金預けておく余力はありませんから、ほとんどがハウスメーカーになるでしょう。
 次に保険。保険は国土交通大臣から指定を受けた5法人のみが扱えることとなります(本年7月1日現在)。保険と申しましても、二つ返事で加入させてもらえるわけもなく、加入には新築住宅の場合、工事中に専門の検査員の細かい検査を2度受けなければなりません。具体的には、基礎のコンクリート打ちの前に鉄筋の状態の検査と上棟後に定められた金物や部材が適切に施工されているかの検査。計2回です。
編集部
ん? 僕んちはもう10年以上前に建てたのですが、その時も2回の検査があったはずです。
既に10年経過してますが、新築の頃に10年間の保証書はいただきましたよ? それとどう違うんですか?
稲 垣
具体的には変わりません。我が社も10年間の保証なんてずいぶん昔からやってたので、この住宅瑕疵担保履行法ができるといって大騒ぎしている意味がよくわからなかったのです。以前からそういった取り組みをされて来た会社であれば、いったい何が変わって、何を騒いでいるんだい?って感じなんだと思います。
ただ、今までは任意だったものを強制にするということと、保険制度に移行するぐらいしか僕の中では認識していません。悲しい現実として、10月1日前に引き渡してしまおうという動きは全国的にあったようですよ。
それが何故なのかを知らされぬまま施主さんは引渡しを受けている。
編集部
なんか嫌ですよね。
稲 垣
まったくです。一生に何度もないであろう家造りのお手伝いに指名されて、工事が無事完成にすることなんて施主さんからみたら当たり前な話です。
そこから先、つまりお引渡し以後からが本当のお付き合いですからね。