CHANGE〜2009年の住宅政策

2009年最初の住まい講座は、気になる“住宅政策”がテーマ。歓迎すべきお話かと思ったら、実は……。 ※ここでの住宅減税の内容は決定事項ではなく平成20年12月中旬に発表、報道されている内容です。実際の法施行時は内容の変更があるかもしれません。
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編集部
CHANGEってオバマ次期アメリカ大統領ですか? タイムリー……ですかね。
稲 垣
いや、別に次期大統領を意識してのタイトルじゃないんですけどね。2009年は色んなことが変わる、あるいは変わらざるを得ないのではないかなと思っています。僕らの業界でも変わらざるを得ないことは恐らく山ほどある。景気刺激策としての住宅減税の話があるじゃないですか。過去最高の10年間で最大600万円の減税。今までは160万円でした。ここからの話は平成20年12月初旬に発表されている内容に添っての話なので、今回の号が発行される頃には内容も変わっているかもしれないし、よりはっきりとした全体像が見えていると思います。
編集部
すごい額の減税ですよね。景気自体は悪いのかも知れないけれど、家造りの計画を温めてこられた方にとっては朗報と考えてもいいんでしょうね。
稲 垣
う〜ん……表向きは。ご存知でしょうけど住宅ローン減税は、住宅建築(購入)資金の年末借入残高の一定割合を納税額から差し引く制度です。600万円満額の減税を受けられる家そのものは、長期優良住宅、通称200年住宅と言われている住宅です。で、200年住宅を建てる方で、借入残高5000万円までの1.2%分の税負担を10年にわたり軽減するって制度ですね。つまり、納税額がかなりあって、200年住宅を建てられる方のみが満額の減税の恩恵を受けられるのです。果たして、長岡はもちろん、地方都市にそういった方がどれくらいいらっしゃるんでしょうね。  ちなみに、200年住宅というのは、孫子の代まで住み続けられる、つまり長期にわたって優良で存在できる可能性がある住宅ってことです。福田内閣の肝いりで作られた制度で、認定された住宅会社でしか建築できません。ハウスメーカーが主ですね。私どもでも200年住宅は建てられます。ただし私どもが200年住宅を建てるとしたら材木はオール国産材にしなければならないとか、いくつかの約束事がありまして、コストアップいたします。恐らく全ての200年住宅がコストアップするのではないでしょうか? 雑誌に掲載されていた200年住宅の予想平均コストアップ分は15〜20%だそうです。
編集部
減税されてもトータルで掛かるお金が増額してしまっては意味ないじゃないですか。
稲 垣
確かにねえ。でも国は200年住宅を建ててもらいたい理由があるんですよ。その理由は後にしますが、200年住宅でなくても住宅減税対象になります。例えば断熱性などの基準を満たす省エネルギー住宅は同様に1%分を軽減、控除額は最大550万円。一般住宅は同様に1%分を軽減し、控除額は最大500万円。  編集さん、いいですか、これはあくまでも僕の私見ですよ。決して200年住宅を批判しているわけじゃないですからね。現実的には200年住宅より省エネルギー住宅にして1%、最大550万円を狙ったほうがいいのではないかと思っています。トータルコストのアップ分がごく少なくて済むからです。だいたい200年住宅ってそんな先のこと誰もわからないし、いくら間取りが変更しやすくなっていても次世代どころかひ孫やその下の世代の暮らし方なんか僕には想像すらできません。で、200年住宅なら仮に転売を余儀なくされた時も高額取引ができますよなんて言われても、僕は、もちろん僕を含めた家に対して自分でメンテナンスをしないという国民性が変わらない限り中古住宅の取引額が大幅にアップするとは思っていません。
編集部
遠回りに批判……ではないですね。それぞれの主義主張というところですか?(笑) ところで、先ほどの話、国はなぜ200年住宅を望むのですか?
稲 垣
前置きしておきますが、国がはっきりそう言っている訳ではないですよ。僕の勝手な推論ですがそう大外れはしていないと思っています。キーワードは地球温暖化の抑制です。
編集部
はっ? そこまでこじつけて自分の得意分野に持って行きたいんですか?(笑)
稲 垣
いやいや、絶対そうですって。地球温暖化対策を住宅建築レベルでできること。おそらく国は大きく分けるとこの二つを望んでいると思ってます。 @建物の超寿命化  建物が超寿命化して、建設〜解体〜廃棄と言うスパンが長くなればそれだけ資源を無駄にしないのですから温暖化抑制できます。それが200年住宅に繋がる。さらには木造の200年住宅に「オール国産材」という規制を掛けたのは僕が前から言っている木材運搬に関わるCO2削減。いわゆるウッドマイレージを少なくしたいということなんだと思います。輸入木材を減らして国産材を活性化したいんだと思います。 A建物の高断熱化  住宅に今以上の断熱気密性を持たせれば冷暖房負荷が軽減される。冷暖房負荷が軽減されればエネルギー消費そのものが抑制されるわけです。したがって一番身近な地球温暖化対策だということになる。
編集部
なるほどねぇ。確かに繋がりました。
稲 垣
本当はもっとやりたいことあるんだと思いますよ。あんまりうまくいってないみたいですけど。例えば自然エネルギーの活用。住宅で風力発電というのは考えにくいので、やはり太陽光発電。一般住宅の屋根に太陽光発電パネルを敷いて自家用電力とする。それでも余ってしまった電力は電力会社が買い取らなければならない決まりになっています。自然エネルギーで自家発電、余れば売電。いい話でしょ? でもそうは問屋が降ろさないんですね。仮に自宅の電気量が1年中ゼロ、つまり自家発電で100%まかなえるとしましょうか。それでも太陽光発電の設備に掛かるイニシャルコストを取り戻すのは何十年も先。おまけに太陽光発電パネルは半永久使用できたとしても、売電機等は家電製品と一緒ですのである程度のサイクルで取替えになります。長岡市を中心とした降雪地域では、おそらくランニングコストの浮いた分でイニシャルコストを吸収するのはほぼ不可能。たしか太陽光発電に対する国の補助金事業はそう多くはないですし、地方自治体の補助金制度が金額も戸数も倍増してもらわないと爆発的普及は難しい。  では、僕がトータルランニングコスト<イニシャルコストだから太陽光発電は駄目だと言っているのではありません。むしろそうしなければならない時代に既に入っているとさえ思います。ただし、現在の価格では手を出せる方はそう多くはいらっしゃらない。だったらちゃんと国の地球温暖化対策の政策として補助金出してもらわないと……って話です。
編集部
無駄使いさえしなきゃねえ……。おっとこれは我が家の家計のことですよ。決して国レベルの話ではありません。
稲 垣
(笑)。恐らく今年、本当はもっと以前からなんですが、世界は温暖化対策で前進しないと地球は崩壊する。アメリカの政権が変わって世界一のCO2排出国がその態度を変えてくれるといいですね。僕は次期アメリカ合衆国大統領に期待しています。
編集部
やっぱりオバマ大統領じゃないですか! 稲垣さんを見習って地球のこと、環境のこと、考える時間が増えました。少しだけでも前進するといいですね。YES・WE・CAN!