晩夏の警笛

今年の夏、全国各地で頻発している記録的大雨、通称“ゲリラ豪雨”。 よその地域の出来事だと思っていたら、長岡でもとうとう………。
イラスト
稲 垣
本日、9月8日。一昨日のゲリラ豪雨すごかったですよね。僕の会社の前の道も排水が追いつかなくて一時川のようになってましたし、自宅のほうは車庫のシャッターギリギリの所まで水が上がりました。もともと自宅は周辺でも低い土地なんですよね。昨日(7日日曜日)の午前中にもゲリラ豪雨降ったんですか? 僕は窓の大してない建物の中にいたのでわからなかったです。
編集部
9月6日程ではなかったですが、7日日曜日も降りましたよ。6日のゲリラ豪雨以来、我が家のクルマの乗り入れに使っていたプラスチック製の歩道乗り入れブロックが行方不明です。お向かいの奥さんの話では川のようになった道路を滑るように流れていったらしいです。そう言えば昔は夕立って呼んで、雨はこんな降り方してなかったですよね。
稲 垣
夕立って言葉、すでに風流というか言葉自体に風情を感じますね。ゲリラ豪雨では風情もなにもあったもんじゃない(笑)。夕立と呼ばれていたころの、地域限定しかもごく狭い地域で降る集中豪雨を僕は知りません。と言うか覚えていません。けれど皆さんが感じているとおり、雨の降り方は夕立とは違うし、熱帯のスコールとも確実に違う。先月末、大阪で降った雨なんて1時間に110mmですよ? そりゃ1時間に10cm以上降られたら下水道や道路の側溝なんて都市機能は機能不全になって当然ですよね。  少し調べてみたのですが、このゲリラ豪雨、全国的に頻発していて気象庁も「記録的大雨の夏」とこの夏を総括しています。では具体的にどう大雨の夏だったのか。1時間に80mm以上降る猛烈な豪雨が8月1月だけで全国19箇所も観測されています。30年間で最も多く、年々その数は増え続けています。
編集部
単純に考えて2日に1回以上の割合でゲリラ豪雨が日本のどこかで降っているってことですね。年々増え続けているのはやはり地球温暖化ですか?
稲 垣
各研究者はこぞって地球温暖化とゲリラ豪雨の関係を指摘しています。僕は環境研究家でも気象の専門家でもないのでどのくらい相関関係があるのかはわかりません。皆さんが感じているやはり地球はおかしいという感覚と違いません。ただ、この夏のゲリラ豪雨は都市部で多かったそうです。東京のゲリラ豪雨でも下水道工事の作業員が亡くなってしまったのは記憶に新しい。気象庁ではこの都市部のゲリラ豪雨とヒートアイランド現象は確実に関係していると見ているようです。
編集部
ヒートアイランド現象?
稲 垣
都市部は高層の建物が多く、熱気がこもりやすい。もともと人が多いわけだから、エアコンなどの室外機から発する生活熱も膨大です。夏の夜、都市部はなかなか温度が下がらないのはコンクリート、アスファルトが昼間蓄熱してしまい、夜、気温は下がり始めるから今度は放熱を始める。だから都市部は夜も暑い。こういった現象を総称してヒートアイランド現象と言うんですね。その熱せられた都市部の人工的な熱気が積乱雲を刺激してゲリラ豪雨になるってメカニズムらしいですよ。ヒートアイランド現象がゲリラ豪雨を誘発しているのは間違いない。けれどもっと大きなことを言えば地球全体が暖かくなっている、つまりヒートプラネット現象が地球全体を異常気象にしているという話も研究者の話として読みました。
編集部
そう言えばつい先日、赤道直下アフリカの……どこかの国で最大直径3cmの雹(ひょう)が降ったことをテレビで見ました。やはり地球規模でおかしいんですね。
稲 垣
僕らがどんなに声高らかに地球温暖化防止を叫んでも、世界中の国があの有様じゃ何にも変わらないですよね。まあ、僕は僕のできることしかできないんですけど。
編集部
家造りにおいてゲリラ豪雨対策って何か考えられてます? あるいはその対策としてこんな風に変わっていくんじゃないかってこととか。
稲 垣
ゲリラ豪雨に特化した話ではないし、これからは日本人があまり経験したことのない規模の台風も増えていくと本気で信じてます。中越地震直前にこの紙面で僕は地震などの天変地異が怖い、と白状しました(笑)。台風も例外じゃない。けれど台風に備えることと地震に備えることは住宅クラスの低層の建物ではほぼ同じ意味合いです。だから地震への対抗策は台風へのそれとほぼ同じだと思っています。  現在、というより結構前からそうなんですけど、私どもの会社で工事のお手伝いさせていただいている家の基礎は他のお宅に比べてかなり高いです。あっ、高いと言っても価格の話じゃないですよ(笑)、基礎の高さの話です。基礎の高さを高くすれば当然それだけ価格はアップするのですが、コストのことだけを考えて基礎を低くするつもりは更々ありません。ゲリラ豪雨に合っても、私どものお客様だけは床上浸水はもちろん、床下浸水もさせない。それが徒労に終わってしまうのならそれはそれで良いことだと考えています。  そして、これからこの地方でも増えていくのかもしれないと思っているのは雨戸。関東近郊の一戸建ての家は雨戸が当たり前のように付いています。けれど長岡で家中に雨戸が付いている家、見たことあります? それは、関東近郊でも雨戸本来の意味ではなく、雨戸は防犯のためにつけるという考え方が定着してしまったからです。長岡あたりはまだまだ田舎で平和だから雨戸文化は定着していません。が、防犯の意味合いではなく雨戸本来の意味である雨風からサッシ(建物)を守るって言う意味が見直されれば、雨戸も少しずつ普及するんじゃないかと思っています。ただ、雨戸もピンからキリまでありまして、こんなんで台風に対抗できるわけないって雨戸も雨戸として売られてますので、雨戸なら何でもいいってわけではないですけどね(笑)。備えあれば憂いなし……とはよく言ったものだと思います。
編集部
まったく関係ないんですけど、ずいぶん前のやっぱり晩夏の頃に、夏の終わりの匂いが感じられないとおっしゃっていました。今年はどうでした?
稲 垣
もう何年も感じていませんよ。夏の終わりの匂い。ですが、過ぎ行く夏をセンチメンタルに送りたかったので、僕世代の編集さん、または読者の皆さんはご存知だと思いますが、ハマショー、浜田省吾さんの「晩夏の鐘」を聞きつつ8月が終わりました。
編集部
……(爆笑)。いくらテーマがないって言っても、「晩夏の鐘」を晩夏の警笛に掛けるってどんな感覚してるんですか?