我が家への不満

念願のマイホーム。だけど建ててから「あそこをこうしておけばよかった……」と 不満を感じている人は昔も今も多いようで……。
イラスト
稲 垣
先日、「新築された方の家に対する不満」についてある建築の専門雑誌で特集記事が掲載されていたのですが、正直申し上げると昔から家に対する不満って変わってないなあと思いました。最新のデータも僕が建築を学び始めた二十数年前もその内容はあまり変わっていないのです。
編集部
今も昔も家に対する不満が変わっていない? ライフスタイルやライフサイクルは恐らく劇的に変化しているだろうに、その不満の内容があまり変わっていないというのは何だか不思議な話ですね。
稲 垣
そうなんですよね。だから僕はこう思ったんです。ライフスタイルが変わったと思っているのは実は家の外だけでの話で、家の中での生活そのものは今も昔もあまり変わっていないんではないかと。
編集部
もったいつけないで、その不満の内容を教えてくださいよ。だいたい想像できますが……。たぶん、収納の少なさなんかが上位に来ているんじゃないですか? なにせ、我が家がそうですから。物だけ増えても捨てられない。結果、収納の場所が圧倒的に足りない感じです。
稲 垣
当たりです。ダントツと言っても過言ではないくらいの勢いで「収納の少なさ」が一位です。これは昔も一位だった気がします。興味深いのは、そのアンケート調査では相対的な収納の少なさへの不満から一歩踏み込んで、「どの部屋の何を仕舞う収納が足りないのか」も調査してました。  「どの部屋」、そこでもダントツ一位なのが「リビング」次いで個室のクロゼット、キッチン廻り、そして廊下と続きます。「何を」はリビングでは子どものおもちゃ、キッチンでは分別ゴミ、これはこの先ますます分別が細かく指定されていくと思いますので、さらに不満は増大しそうですね。そして個室では洋服、廊下では……何だと思います?
編集部
廊下にあるべき収納ですか……? 我が家も廊下には収納ないけどあんまり不便を感じたことがないなぁ?
稲 垣
廊下周りの収納には掃除機、古新聞雑誌です。たぶん奥さんは工夫して居られるんですよ。そういった物ってリビングや個室の収納に仕舞うのも変ですよね?  リビングは家族の中のパブリックスペースとはいえ、プライベート空間の個室の収納に掃除機仕舞うって違和感あるじゃないですか? だから家の中でも玄関ホールや廊下周りに収納が必要になるんですよね。建築雑誌などで間取り図も見ると笑ってしまうくらい収納が少ない。特に著名な先生にその傾向があるのは間違いないと思います。  僕個人的には最低でも家の面積の7〜10%は収納に当てないと収納が少ない。40坪の家なら約3坪〜4坪。4坪と言えば8畳の広さです。40坪の家で8畳分を収納に割くのは現実的には難しいと思いますけど本当はそれくらい欲しいですよね。僕自身がすごく貧乏性で物を捨てられない性質なのでなおさらなんでしょうか。
編集部
僕んちも40坪くらいですけど、今思い浮かべたら収納は畳3枚分、ってことは1.5坪ですね。稲垣さんの言う数値の半分にも満たない。どうりで部屋が片付かないはずですね。
稲 垣
でもこの数字は統計学的に算出された数字ではなくて僕自身の感覚的な理想値ですから、あまり数字にこだわらないでくださいね。その他の不満ではやはり昔と変わっていなかったのですが、コンセントの数と位置。コンセントはいくらあっても邪魔にならないとはいえ、そんなに数を付ける訳にも行かず、個室だと2〜3カ所ですか? 中には1カ所を標準としているメーカーさんもあるみたいですが……。数ももちろん絶対的に足りなければ話にならないのですが、折角つけたコンセントが家具の裏側になってしまい、結局使えないなんてことはよくある話です。だからこそ間取りを検討する段階でその部屋で使う電気製品の想定と、そこに置くであろう家具の想定はしたほうがいいですよね。あるいはお手持ちの家具の寸法を教えていただければ、設計の人間がレイアウトの例を間取り図に落としてくれるはずです。たかがコンセント、されどコンセント。慎重に決定されてください。  先ほどの収納とコンセントの話、双方にリンクするのですが、リビングには当然のように造り付けのテレビボードを設置する時代が、間違いなくすぐそこまで来ています。DVDレコーダーやCD、DVD等をすっきり収納できる物ですね。そうすれば、細かい物の収納とコンセントが使えないなんて事は一気になくなります。当然ながら家によってリビングの向きも大きさも違うわけですから、家具を造り付けるベストな場所も違ってきます。その辺は建築屋さんと深く相談されてください。
編集部
なるほどねえ。家具を造り付けることによって家に対する不満の上位を二つやっつけてしまえるわけですね。少数意見でも面白いものなかったですか?  ちなみに僕の今の家の不満は窓が多すぎること。しかも1階は掃き出し窓が多いので壁面が極端に少なく、家具の置き場所にも困る始末です……あれ? 造り付け家具にするとこの不満もなくなりますね。
稲 垣
確かに窓が多すぎるのも使いにくい部屋になってしまうんですよね。少数意見の中に窓絡みの不満ありましたよ。窓の位置が高すぎて硝子拭きが出来ない、吹抜けでもないのに嵌め殺しの窓だから物理的にガラスが拭けない。なんてのが……恐らく設計者は図面段階でそんなこと判り切っていたと思います。設計者はそれをわかった上でもそうしたい理由があったのでしょうけれど、実際に生活すると、設計者のこだわりも不満に変わってしまうケースもあるってことですね。僕も気をつけます。  家造りを終えられて「最初からやり直したい、またはやり直したい部分がある」方は全体の4割にも及ぶそうです。これは少なくない数ですよね。家は皆さんの生活そのものを決めてしまいかねない高額な買い物です。計画は建築屋さんと二人三脚、じっくりと確実に歩を進めてください。