この家をあきらめない

今回は様々なトラブルも聞こえてくる、 家のリフォームについてお話いただきました。
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編集部
前回の「この敷地をあきらめない」、いわゆる変形敷地の話が意外に好評で、読者の方からの反響が久しぶりに良かったのでその話の続きといいますか、同じ路線での話をお願いできますか?
稲 垣
意外に好評……久しぶりに反響が良かった……失礼だなあ。 敷地の話はもう続かないですよ。家の話にしましょうか?
編集部
この家をあきらめない……ですか? そういえばリフォームについて読者の方からこんな話をいただいてました。 「リフォーム専門会社に水周りの一新と和室を洋室に変える工事をしてもらったけれど当初の見積もりよりかなり追加工事を請求された」。 そんなものなんでしょうか?
稲 垣
う〜ん……リフォームは難しいですからねえ。と言うのは、床を壊してみたら下地が腐っていた、白蟻が出てきたなんてことはよくあります。 要は見積り段階では良くわからない問題が解体すると見えてきてしまうってことがあるんです。 まさか柱や土台、下地が腐っているだろうという前提で見積もりするわけにもいかず、工事段階で発覚する問題は、床を剥したり壁や天井を壊してみて初めてわかることも多いんです。 その読者の方がご立腹なのは説明もないまま追加請求されていることですよね? もしリフォーム会社が何の説明も承諾もなく追加請求したのなら、クレームとして声を大にしていいと思います。壊してみたらこういう問題が発生していました。 だからこういった方法で解決したいと考えます。見積り時には予想できなかった事態です。つきましては費用が○○円掛かります。こういう説明は欲しいですよね。 もちろんその問題箇所を実際に見ていただくことも必要だったのではないかなと思います。壊してみなきゃわからない部分はあるんです。 それをお客様に告知しなかったり、最悪なのは緊急に補修しなければならないくらいの痛みを知りつつ見なかったことにしてしまうこと。リフォームがかえって家の寿命を短くしかねません。例えば現在の外壁の上から新しい外壁張るリフォームをたまに目にしますが、これは下地に問題があっても判らない。と言うか見ようとしていない。 床の張替えだって下地をろくに調べもせずに、今の床の上から新しい床をバンバン張っていく業者もあると聞きますが、床は表面上は綺麗に新しくなったけど下地の腐りは着々と進行していく……なんて事態もあり得ますよね。 もちろん大多数の業者さんはきちんとして居られると思いますが。
編集部
以前、リフォームだからと言って軽く考えない、より建築のプロでなければリフォーム工事はできないと言われてましたよね。 その建築のプロをもってしてもリフォームのコストは読みにくいと言うことですか。
稲 垣
そうですね。例えば築20年以上のお宅のタイル張りのお風呂の周囲の土台は程度こそ違え、多少は痛んでいます。この程度なら予測はできます。 予測不可能だった実際にあった話ですが、築50年以上の大きなお宅の内装を全面リフォームの際、屋根裏から巨大なスズメバチの巣が出てきて、専門業者に撤去してもらいました。そのお宅の方でさえわからなかったスズメバチの巣の存在を何回か拝見しただけの僕らにわかるわけないじゃないですか。 お客様には納得していただいたうえで、専門業者に支払いをお願いいたしました。 ちなみにその巨大な蜂の巣は現在、そのお宅の玄関に飾ってあります。あとは、知人の実家のリフォームをお手伝いした時、小屋裏を見て愕然としましたよ。断熱材がまったくない。築10年くらいしか経っていないのに。 さぞかし暑くて寒かっただろうと思いました。まあ、この場合は事前に調べられたので、壊してみて始めてわかったわけではないですけれどね。
編集部
リフォームしてると色んなことがあるんですね。 リフォームするにあたって一番大切だと思うことはなんですか?
稲 垣
お風呂だとかシステムキッチンの入れ替え、つまり表面的な目に見える部分にのみ目が行きがちになりますけれど、一番大切なのは家の基本性能をアップさせること。 家の基本性能を左右する部位のほとんどは目には見えない部分だったりします。 例えば耐震性や断熱性。だけどここを強化しようとすると、結果的に外装や内装を一度壊してからでないと工事ができないことが多い。 そうすると必然的にコストは上昇します。現在はできるだけ内外装を痛めずに工事が可能な耐震補強の技術もありますが、やはり住宅の基本性能アップのため“だけ”の工事はコスト高になります。 ですから、例えば外壁張替えを検討されるなら、ついでに耐震補強をするとか、何かのリニューアルに合わせて基本性能アップを計られたらどうでしょうか。
編集部
例えばですね、建物そのものはしっかりしていて何の不自由もないけれど、基礎がボロボロで耐震性に不安があるとします。 さすがにこういった場合は建替えと言う選択肢になるのでしょうね?
稲 垣
そんなことないですよ。基礎を補強する方法はたくさんあります。 基礎の亀裂程度であれば比較的安価に、かつ飛躍的に耐力のアップする方法も。ですので、リフォームが無理ということはほとんどありません。 ただ、対コストの理由で、何百万、あるいは一千万単位のお金をリフォームで掛けるなら、いっそ建替えを考えられたほうがいい場合も確かに存在します。 そういった場合でも大黒柱があれば大黒柱を、松の丸太梁があれば丸太梁を新しい家にも再生させてみたらいかがですか? 記憶の継承と言うとかっこ良すぎますが、新しい物がすべて良いとは限らないと思います。 そしてリフォームをあきらめ、建て替えを選ばれた方は構造体だけキチンと造ってさえおけば、普段目に見えない部分さえ頑強なら、目に見える部分なんて後でどうにでもなるということを忘れないでおいていただきたいと思います。
編集部
稲垣さんのところは、リフォーム工事のイメージがあまりないのですが?
稲 垣
頭来た(怒)……。僕らはどんな小さな工事でもお受けいたしますよ。そのための専属の人間もいますし、自社に大工もいるからこそ話も早い。ただ、編集さんみたいに、小さな工事をしないと思われてる方もいらっしゃるみたいですね。天然素材でのマンションリフォームもしますし、どんな小額だって当然お手伝いいたします。誤解しないでくださいよ!
編集部
また怒らせちゃいましたね……。失礼しました。