住宅を取り巻く環境〜2008

2008年の第1回目は、“住宅を取り巻く環境”のお話です。 「地球環境」から「構造計算」へと話題は広がっていきました。
イラスト
稲 垣
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
編集部
おめでとうございます。年末年始は最強寒波が来ると脅かされていましたが、天気予報ほど大したことはなく、比較的穏やかな歳の始まりでしたね。
稲 垣
それが気持ち悪いと思いません? 今日(1月7日)もそれほど寒くないですよね。
編集部
地球温暖化……ですか? 
特に今年の年末年始のテレビ特番は地球温暖化に関すること多かった気がします。
しかも稲垣さんが以前から声を大にしていた内容そのままみたいな訴え掛けも多いように思いました。
稲 垣
TV局独自の問題意識で番組制作したのか、ある程度国の意向が介在していたのかはわかりませんが確かに以前の環境番組とは違い、このまま温暖化が続くとこうなります、って言う具体的な内容が多かった気はしますよね。 けれど、年末にインドネシアのバリ島で国連の気候変動枠組み条約の国際会議があったのですが、各国の思惑が交錯して結局は温室効果ガスの削減目標を数値化できずに会議は終えてしまいました。 もうそんな牽制のしあいしている時期ではないことはご承知なんでしょうけれどね。 地球温暖化防止会議の京都議定書では2008〜2012年で日本の温室効果ガス削減目標は6%。 けれど実際はまったく逆に6%増加するのはほぼ確実視されています。 実際には僕たちレベルには国がどう言った策を講じるのか見えないんですよね。
編集部
正直言うと、ああいったノンフィクションのテレビ特番を見ていると「こりゃ大変だ」とは思うのですが、自分ごときに一体何ができるんだ?って思います。 何を始めればいいのかわからない。 我が家でやってることなんて、エコバッグを持参で買い物に行き、レジ袋を断わるくらいなものです。
稲 垣
だってお恥ずかしい話、この紙面で声高に環境を訴えても日々何をしているかといえば、何もしていないに等しい。 レジ袋と言えば、日本国内で消費されるレジ袋は160億枚弱だそうです。 石油原料30万キロリットル強分、2リットルのペットボトル1.6億本分の石油原料です。 国がレジ袋使用を禁止したり、袋一枚につきいくらと環境税を設けている国もあります。編集さんや、当然僕を含めても日々の暮らしでエネルギーの節約以外にできることなんてこのくらいしか思いつかないですよね。 建築屋としてだって、無力に等しい。やれることなんてほとんどないですよ。 例えば、材木の輸送距離(ウッドマイレージ)をできる限り減らす。 そのため、可能な限り国産木材を使いたい。 ……すべてにおいて「できる限り」とか「可能な限り」と、注釈が付いてしまう。 数値目標が具体的に立てられないのは国連会議と同じです。 どんなに環境問題を訴えても考えれば考えるほど無力感でいっぱいになります。 でも、それでもいいのかなと思うようになりました。それほどストイックに考えずにやれることをやればいいんですよね。お互いに。 たぶんそう言った肩の力の抜け具合の方が好転するんでしょうね(笑)。 国は恐らく住宅の断熱性能に法整備せざる負えなくなると思います。 あるいは一定の断熱性能を確保した住宅にはより低利での融資とか。 個人的予測ですが住宅金融公庫が実行していたそれよりより厳格かつ低利の制度になればいいなあと期待しています。 住宅からの温室効果ガス削減は急務のはずなんですよね。 ま、法の網を被せられなくても建築屋個々で自らが造る住宅から排出される温室効果ガス削減はもはや義務だとさえ思います。
編集部
話は変わりますが、昨年の6月に建築基準法が改正されて以来、全国的に住宅着工数が激減し、GDPまで押し下げかねない状態だと新聞で知りました。 6月以来その話題に触れなかったのはどうしてですか?
稲 垣
どうしてと言われても……そう言えばどうしてなんでしょうね。 でも、僕のところがそうであるように、混乱したのは9月いっぱいくらいの住宅屋さんが多いんじゃないでしょうか?  あくまでも低層住宅の話に限定しますと、図面に書き込むことが無駄と思えるくらい異様にたくさんになったってことくらいで、慣れてしまえばなんてことない……と我が社の若手のエースは言ってます(笑)。 ただ、住宅業界で言えば一番影響を受けたのは木造3階建てとか、雪国特有の高床式3階建て住宅を主流にされていた会社は法改正の影響をもろに受けてしまったとは思います。 確認申請時に構造計算の添付義務がある建物ですね。この辺りの申請は確かに大変でした。我が社も高床式3階建住宅の確認申請は滅茶苦茶時間がかかりましたし、大変でした。 もちろんもっと大きな建物の設計監理されている設計事務所だったら恐らくいまだに法改正の影響は残っているはずです。 だって法改正直後は審査する側の行政や審査機関の方でさえどう対処していいのかわからない状態でしたから。なんか気の毒でした。 今回の改正は耐震強度偽装事件を受けた形の改正です。  そして今年の12月。再度の建築基準法改正があります(実はここへ来てGDPまで押し下げた前回の改正を教訓に改正時期は不透明になりつつあるようですが)。 この改正を解りやすく説明するとプロには「違うだろ!」と突っ込まれ、逆に詳細に説明すれば一般の方にはまったくわからない内容になってしまいますので、プロの方々には目をつむっていただいて、多少表現が適切でないかもしれませんがご容赦ください。 現況の法律では木造2階建て、一定規模以下の面積と高さで建築士の設計によるものであれば確認申請時に「構造計算書」の添付義務はありません。 けれど改正後は簡易的な(この表現が難しいんですが)構造計算と構造図面を添付しなければなりません。
編集部
なんか恐々と説明されてますね。それほど説明しづらい部分なんですね。 要は今までは「性善説」で、建築士の設計であれば構造計算は要らなかったけど、改正後は簡易的であっても添付する義務が発生するわけですね?
稲 垣
すごくアバウト&乱暴に説明するとそういうことです。
編集部
素人考えですが、次回の改正って昨年の改正より住宅業界の足を引張りませんか?
稲 垣
引っ張るでしょうね。でも手前味噌ですが、僕はずっと以前から、たとえ車庫でもきちんとした構造計算をしていました。 それが安全の担保ですから。だから驚きもしないし、次回の改正はいずれ必ずそうなると思っていた内容です。僕的には歓迎します。けれど業界全体を考えるときっと技術者が不足するし、改正について行けない会社も少なからずあるんだろうなとは思います。 けれど、間違いないのは家を建てる方にとっては絶対にプラスな法律の改正です。 個人的には12月(に本当に改正されたとして)以前か以後かで安全への担保が見える形か見えない形かでは不公平感が出て当然ですよね。 ですからなおさら、これから家造りをされる方は法律なんか関係なく安全への担保として構造計算をお願いしてみてください。
編集部
“住宅を取り巻く環境”と題しましたが、「地球環境」と「構造計算」という繰り返し稲垣さんが言い続けてきた内容になりましたね。
稲 垣
そのつもりはなかったのですが結果、そうなりましたね。けれど我々にも、家造りを考えられている方にとっても避けては通れない課題です。
稲垣
編集部
なにはともあれ、本年もよろしくお願いいたします。
編集部

稲垣さんが話題に困りつつありますので家造りに関してご質問がある方は、ぜひ編集部宛にお寄せください。