Always Be With Town

地域に根ざした仕事を続ける地元の工務店。ハウスメーカーやビルダーなど、 住宅業者は数々あれど、地元の業者も見直してみませんか?
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稲 垣
悪質リフォームについて、気になるニュースがあります。
編集部
以前「おいしいリフォーム」と題して、悪質リフォーム業者の手口や気をつけるべき点はご紹介していただきましたが、その辺も合わせてもう一度お願いします。
稲 垣
昨年1年間で悪質な訪問リフォームで検挙された事件の被害総額が、252億9000万円にのぼります。その主な検挙理由は特定商取引法違反(不実の告知)容疑。要するに工事の必要がないにも関わらず、さも至急に工事をしないと大変なことになると事実と違う告知をして、リフォーム契約および工事をさせたという容疑ですね。
編集部
252億……ですか。びっくりですね。
稲 垣
この被害額だけでも驚きなんですが、これに消火器等の点検を装って高額な商品を買わせる点検商法を加えると、269億5000万円に被害額は跳ね上がります。しかし恐らくこれは氷山の一角。悪意のリフォームをした(された)という実感のない方まで含めたら、この金額の何倍にもなるような気がします。
編集部
悪質な訪問販売形式リフォームのターゲットは高齢者世帯だそうですね。
稲 垣
だまされる方も悪いと言う意見もありますが、相手はその道のプロ。高齢者の方々のお宅に孫ほどの年齢の人間がある日突然やってきて、優しい言葉を掛けつつ、言葉巧みに誘導していくのですから、僕はだまされる方が悪いとは思えません。
編集部
これだけテレビや新聞で悪質なリフォーム業者の存在が報道されていても、被害が減るどころか逆に増えているのはどうしてなんでしょう?
稲 垣
業者側もプロですからね。「振り込め詐欺」がオレオレ詐欺から徐々に形を変えているように、リフォームでも手口が巧妙になっているのは事実のようです。最近でこそ悪質業者の逮捕から実刑に至るケースが報道されますが、その辺の輩を取り締まる法整備が脆弱なこともあるかもしれません。最近首都圏で増えつつあるのが、見積書も契約書も工事の仕様書も完璧に揃えて契約。そしてその内容通りの工事完了という、普通に考えれば通常の商取引であるかのような悪質リフォームです。
編集部
それってどういうことですか? ちゃんと見積書、契約書、仕様書通りに工事が完了しているのならば、いわゆる詐欺行為と言えるのですか?
稲 垣
普通はそうですね。例えば通常は1000円位のものを十倍の1万円で見積もっていても、その金額で承知して契約しているのだからその部分では詐欺行為には当たりません。だけどそこで問題になるのが、先ほども申し上げた“不実の告知”という部分です。必要のない工事をさも必要のように説明した時点で、“不実の告知”に当たります。要するに「すぐに○○しておかないと大変なことになりますよ」的な言葉ですね。もちろんそれが本当の事なら不実ではないので、不実の告知には当たりませんけれど。
編集部
それが不実なのかどうなのかは素人には実質わかりませんよね?
稲 垣
そうでしょうね。だからこそ悪質訪問リフォームはなくならない。誰だって「今すぐに○○しておかないと家が腐る(傾く・壊れる)」って言われたら、そりゃ大変だって思いますもんね。僕の中では悪質リフォームは都会での話だと思っていました。けれど、そうではなくなってきている。
編集部
当地長岡のような田舎でも、確実に悪質な訪問販売形式のリフォームは増えているのですね。
稲 垣
それは僕を含めた地元の建築屋の怠慢であるとさえ思っています。田舎でも悪質なリフォーム業者は増えつつあることと、先ほどの「素人ではその事象が不実なのかどうかの判断さえできない」ということ。この2つの根源は、地元長岡の建築屋のせいです。もちろん僕を含めた上で。
編集部
なにやら過激な物言いですね。地元の建築業者が怠慢だから悪質なリフォーム業者が増えていると言われたいわけですか?
稲 垣
中には猛反論される建築屋さんもいられるでしょうね。けれど、建築という商取引の中でも最終的には人と人の人間関係ですよね。あるいは町内の大工の親父、棟梁でいられれば、誰も好き好んで突然やってきた見ず知らずの訪問販売形式のリフォーム業者に工事を頼むより、町内の棟梁に「ちょっと見てよ」とお願いしますよね。悪質リフォームが都会での出来事だという僕の妄想は、都会になればなるほど人間関係が希薄だから。恐らくそれは間違いないでしょう。
編集部
けれど、当地も考えていた以上に人間関係が希薄になってきている……。
稲 垣
都会ほどではないにしても確実にそうなってきている。だからこそ、読んでいただいている皆さんに申し上げます。困ったらまず町内、あるいは学区にある建築屋さんに見てもらってください。恐らく「見るだけなんて嫌なこったい」という建築屋さんは皆無のはずです。皆さんが思われているほど建築屋の敷居は高くありません。見てもらったからその建築屋さんにどうしても工事をお願いする必要もありません。
編集部
見てもらうだけで金額なんて発生しないということですね。
稲 垣
そうです。もちろん皆さんの家を新築した際の建築屋さんに見てもらうのが一番いいのですが、諸事情でそうもいかない場合は、違う建築屋さんでもいいじゃないですか。地元の建築屋は逃げも隠れもしません。どうか、訪問販売リフォームにお願いする前に地元の建築屋さんに声を掛けてみてください。意外なほど気さくに対応していただけるはずです。
編集部
リフォームの話の時は、いつも地元の建築業者代表みたいな感じですね(笑)。
稲 垣
僕も地元の建築屋です。ここでしか生きられません。地元の業者はみんな同じはずです。住宅業者をハウスメーカー、ビルダー、地元工務店と三者に大別するなら、私どもは間違いなく地元工務店のカテゴリーに入ります。メーカーやビルダーに、地元工務店は○○だから駄目なんだと言わせないために、おかしなことはできません。だからこそ地元の建築屋が地元であることの意味をわかるべきなんです。もちろん、僕も含めて。今年は長岡で仕事をさせていただいている意味、意義をもう一度一から考えようと思っています。まずはメンテナンス、アフターサービス専任のお客様担当サービスマンを仲間に加えました。少しでもお客様のご不便、不都合を早期解決できればいいと考えています。
編集部
皆さん、稲垣さんは従業員を仲間と呼び、いい年こいて某大ヒット少年漫画を見ては感動してる単純な男です。皆が皆ではないと思いますが、地元の建築屋さんも職人気質の熱い方々が多くいられると思います。どうか、まずは地元の建築屋にご相談ください。Always Be With Townとは「いつも町と」「いつも町と共に」という意味だそうです。
稲 垣
まとめて頂いてありがとうございます。単純は余計ですけどね。

今月の余談

以前一級建築士の試験の話をした時に、僕のパソコンに、来年一級建築士試験を受けられるという方から問い合わせのメールをいただきましたが、迷惑メールと一緒に消してしまいました。申し訳ありませんがもう一度メールをください。ちなみに僕がいる学校はSです。Nではありません(試験業界の隠語です)。