Smile(スマイル)

2007年、住宅を取り巻く環境はどうなっていくのだろうか……。 今年も稲垣社長に業界の事情をビシビシお話いただきます。
イラスト
稲 垣
新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
今日現在(1月5日)は雪もなく、本当に天気のいい新年で大助かりですが、雪がなくて困っている方や、ご商売に影響している方も多くいらっしゃると思いますのであまり大喜びするのはやめておきます。
編集部
今年はどんな年にしたいとお考えですか? また、住宅を取り巻く環境はどんな風に変わっていくと予想されますか?
稲 垣
私事ですが後厄が終わります(笑)。ただ厄年というのは年次で区切るのではなく、節分で区切るらしいので2月までは油断はできませんけどね。
住宅を取り巻く環境……と言いますか、建築業界では昨年から始まっているのですが、原油の高騰、鉄の原料の鉄鉱石価格の高騰、加えて中国好景気の維持などが要因で、すべての建築用の材料価格がじりじりと上昇傾向にあります。
編集部
年初から値上げの話ですか。
稲 垣
価格が上がるだけならまだしも、例えば構造用合板などは品物がなくなるのではないかと噂された時期さえあります。大きいのは中国の需要の増加ですね。
実は大国・中国は木材の輸入大国でもあるんですが、アメリカ、カナダ、ロシアといった森林大国はもちろん、東南アジア諸国の木材もかなり大量に中国に流れていると聞きます。
編集部
え、どうしてですか?
稲 垣
日本が輸入している木材は日本の基準に照らして質のより良い物のみが選別された上で流通しているのですが、中国は木材の等級にはあまりうるさくないらしく、品質の良い物も悪い物もまとめてお買い上げいただけるので、事細かに注文を出す日本に売るより面倒でないということらしいです。さらに、それに加えて(本当は当然なのですが)、東南アジア諸国政府が森林の違法伐採の取り締まりにようやく重い腰を上げたようです。違法伐採は宇宙の監視衛星から見張る時代。仮に違法伐採で捕まれば日本では考えられないくらいの重罪で罰せられるので、誰も違法な伐採をしなくなる。業界のある方が言われましたが「日本に入る輸入合板の3分の1は、違法伐採木材から成り立っていたのではないか」とする声まであります。
編集部
稲垣さんはずいぶん前に、「自国に潤沢な森林資源がありながら世界の山を買いあさる国」として、ジャパンバッシングが必ず始まると予見されましたよね?
稲 垣
僕が思うにジャパンバッシングのいい例だと思うのですが、中国とロシアはある日突然、輸出木材に10%の関税を掛けました。ロシアの関税は今年中に20%にすると公言までされています。しかも関税発表ほぼ即日実行ですから手の打ち様もありません。現在、多くのハウスメーカー、ビルダーが柱に使用しているホワイトウッド、梁等に使われている欧州赤松(レッドパイン)等のヨーロッパ材も大幅コスト高の状態です。
編集部
原油の高騰による輸送費の上昇に加え、ヨーロッパ通貨のユーロ高もありますね。
稲 垣
2000年には1ユーロ100円前後だったレートに対し、昨年の8月ついに1ユーロ150円を突破いたしました。為替レートの話なので木材業界のみの話ではないため手の打ち様がないようです。輸入木材価格が高騰すれば必然的に国産木材に目が行きます。しかしそこは需要と供給のバランス。国産木材もじりじりと価格が上昇傾向にあります……と、ここまでは材木を輸入する大手商社の方の受け売りなんですが(笑)、実際に住宅を構成する材料で値上がり傾向にないものはありません。
編集部
材木、アルミサッシ、ガラス、金属製品、プラスチック製品……およそ建築に使われるすべての材料が値上がり傾向にあるということですね。
稲 垣
その通りです。しかし、一番怖いのは価格のことよりも物がないという事態まで容易に想像できること。何年か前に、ほぼすべての建物に使用されるであろう石膏ボードが、市場からなくなる寸前の状態になったことがあります。物は違っても今年、同じ状況にならない保証はありません。ただ勘違いしていただきたくないのは、材料価格の上昇傾向の話をしますと「住宅を建てるなら早いほうがいいですよ」と煽っているように受け取られてしまうかもしれません。実際そんな意図はまったくありませんから誤解なさらないでください。
編集部
家を建てるということは、人生の伴侶を決めることに似ていると言われますね。周りの状況に流されることなく、ご自分が“この人(家)なら”と思う家を探してください……ということですね。
稲 垣
家を建てる時期というのは、皆さんが“家を建てよう。建てたい”と思った時がベストな建て時だと思っています。金利上昇、消費税率上昇、材料価格上昇などは背中を少しだけ押してくれる因子に過ぎません。皆さんが将来的な家族のイメージを持てた時がその時期だと思うのです。
編集部
しかし材料の価格高騰はエンドユーザーのみならず、建築屋さんにとっても大問題でしょう?
稲 垣
取るに足らない問題だとは申しません。材料価格の上昇を住宅価格に転嫁しないにも限度がありますから。それはどんなに大きなハウスメーカーでも同じはずです。一部のビルダーでは、材料価格上昇を不要に煽って契約を促す醜いトークがなされていると聞きます。
編集部
焦ることはないのでしょうか?
稲 垣
 焦ってお見合いして、周りに流されると、本意ではない伴侶を選んでしまいますよ。腰を落ち着けて考えてみたほうがいいでしょうね。材料価格が上がっているとはいえ、何百万円も上がっているわけではないし、工夫次第で材料価格上昇分なんていくらでも吸収できるはずなんです。
編集部
ところで、今回のタイトルである『Smile』は、今回の話にどう関係してくるのでしょうか?
稲 垣
そうそう、忘れてました(笑)。それは僕の2007年のテーマです。『Smile』スマイル。笑い、笑顔です。生涯、あるいはそれに近いくらい長い年月を共にする伴侶選びは、最終的に『Smile』で終わってほしいものです。お客様も建築屋もその住宅に携わるすべての人間が『Smile』で居られるように。
編集部
住宅を造る人はロマンチストが多いと聞きますが、まさにそうなんですね。
稲 垣
僕はロマンチストではないですよ。超現実主義の堅物です(笑)。ともあれ、年頭から考えられないような事件報道を見ます。亥年は波乱含みらしいのですがこれから家造りを楽しまれる方もそうでない方も『Smile』で居られる一年でありますことをお祈り申し上げます。