読者からの質問状1

最近よく目にする「ローコスト住宅」。しかしそれは本当にローコストと呼べるものなのでしょうか。家づくりにおいて本当に大切な物は何なのか。一級建築士の稲垣隆がお答えします。
イラスト
稲 垣
明けましておめでとうございます。
編集部
おめでとうございます。しかし、年末から年頭にかけてのこの雪は何ですか?
稲 垣
何ですかと私に聞かれましても……何なんでしょう? 
私が幼い頃はこんな年もあったのかもしれませんが、私の記憶の中にはこういった雪の降り方を経験するのは初めてです。
編集部
地球は温暖化傾向にあるんですよね。
稲 垣
地球全体の平均気温は上がっているはずです。
年末のテレビで見ましたが珊瑚礁の生息域が北上し、伴ってそれを押し上げる様にワカメの生息域も北上していると知りました。
寒い海で育つワカメの生息域が北上、暖かい海が生息域の珊瑚礁も北上、つまり海水温度が平均的に上昇傾向にあるということらしいです。
何でもかんでも地球規模の異常気象のせいだとは思いませんが、世界的な大寒波や異常熱波の報道を見ていますとそう思いたくもなります。
編集部
いずれにせよその因果関係はさっぱりわかりませんが、去年の猛暑といい、現在の記録的な大雪といい、地球規模でおかしなことが頻発しているのは多くの方が感じていることですね。  さて、今回は延び延びになっていた読者の方からのおハガキに答えていただきます。
まずは地球環境の異変という話題が出たので、住宅とは少し縁遠いかもしれませんが、環境に関する質問から。

「愛知万博、愛・地球博に行って参りました。
あの建造物は当然のことながら万博期間が終われば解体される運命にあります。
エコロジーという視点から見れば、とても地球に優しいとは言えないと思いますが、どうお考えになりますか?」
編集部
壮大なテーマのご質問です。
稲 垣
私などがどう考えているかを申し上げても何の解決にも進歩にもならないと思いますが、知っている限りのことをお伝えします。
万博の建築物がすべて解体されるわけではありません。
有名どころですと、大阪万博の故・岡本太郎氏の作品「太陽の塔」。
あまり知られていないのはパリのエッフェル塔も万博用の建築物です。
大阪万博は大量生産から消費そして廃棄と旧型万博の典型と言われ、現在ではあのやり方は間違っていたといわれています。
 ただ、2000年ドイツのハノーバーという都市で開催された万博からは劇的に変わっています。
各国のパビリオン建築に付加された条件は廃棄物を出さない、捨てない事。材料のほとんどをリサイクルするか、別の用途の建築として再利用されることの確約が必要でした。
編集部
さすが環境先進国ドイツという感じですね。
稲 垣
ハノーバー万博での日本館は、日本人有名建築家の設計による「紙の建築」。
柱、壁、屋根、そのほとんどを紙で造り上げられた建築です。
解体後は現地の教科書用の紙にリサイクルされたそうです。
リサイクル及び転用された多くの材料は木材、木から作られた紙。そういった意味でも、木の建築はリサイクルのきくエコロジカルな材料だといえます。
ハノーバー万博以後の愛知万博も当然のことながら厳しいリサイクル条件が付加されています。ですから、大量消費〜大量廃棄ではないのでご安心ください。
でも、こういった意識は私も常に持ち続けた上でいろいろな物を見たいと感じました。
編集部
では続けます。

「世新築住宅に引っ越した途端に目の充血や痛みなどを感じるようになりました。 シックハウス症候群でしょうか?」
稲 垣
一概には言えません。
現在の基準では有害とされる物質は建築に使ってはならないことになっています。
家そのものよりもまず疑うべきは家具その他。
ご自分で運び込んだ物ですね。家具業界も有害化学物質除去に努めてはいますが、例えば極安価な組立式の家具等の中にはかなりの薬剤を使用したものもあります。
可能であれば怪しいものを一度運び出し、換気を十分にした後で様子をみられることをお勧めいたします。
病院に行って、目の痛みがアレルギーであればお医者様からテストをしていただき、アレルゲン(アレルギーの原因物質)を特定していただいた上で家の中のどこにそのアレルゲンが潜んでいるのかを突き止めたいですね。
編集部
次の質問です。

「世間で問題になっている悪徳リフォームの映像を見た後で、我が家の床下を見てみたらテレビの映像と同じ金物が使われていました。 大丈夫なのでしょうか? ちなみに築3年でリフォームはしていませんので、新築の時から金物は付いていたと思います」
稲 垣
多くの方々が誤解しておられるのですが、テレビに映る建築金物には何の罪もありません。多くの金物は「ちゃんとした」使用部位、使用方法ならきちんと効力を発揮します。テレビ映像に写る金物はデタラメな使われ方をしていることが問題なのです。
床下の補強金物を小屋裏に使用したり、その逆だったり。
数を多くつければいいものでもありません。
ですからテレビの悪徳リフォーム映像と同じ金物がお宅に使用されていても、その事実そのものに不安を抱く必要はありませんよ。
編集部
悪徳業者には本当に気をつけましょう。

「我が家は中越地震ではそれほどの被害はありませんでしたが、長男夫婦が同居することになり、増築か建て替えかで迷っています。 その判断のポイントをアドバイスください。築15年です」
稲 垣
築15年で解体、建て替えはさすがにもったいないですね。
私どものお客様でしたら、増築+リフォームをお勧めします。
もちろん同居されるご長男のお考えもありますし、地盤や基礎、構造体についてもきちんと調べてみる必要はあります。
増築の場合、一番の弱点は既存部分と増築部分の接点。
ここの繋ぎ方が不十分ですと、中越地震のような大きな地震でそれぞれが離れてしまうことが考えられます。今回の地震でもそのようなお宅は多く見受けられました。
古い部分はなんともないのに、増築した新しい部分が大破したというお宅まで拝見いたしました。
いずれにせよ、ご家族が求められている暮らし方を増築+リフォームで叶えられるか専門家にご相談してみてください。
そして、ただ新しくするリニューアルではなく、思い描く暮らし方に近づく様なリフォームにしてください。
編集部
紙面の都合上、とりあえず今回はこの辺までにいたします。
他にもハガキをいただいておりますが、またの機会まで取っておきますね。
稲 垣
あまり難しいのは前もって教えてくださいよ。
さて、平成18年が豪雪とともにスタートいたしました。
皆さんにとりまして穏やかな一年になりますことをお祈り致します。本年もよろしくお願いいたします。