おいしいリフォーム

最近、テレビや新聞の報道でよく耳にする“悪徳リフォーム業者”という言葉。
自分には関係のない、都会の出来事と思っていませんか?
イラスト
編集部
なんですか「おいしいリフォーム」って?
稲 垣
悪徳リフォームについてお話しようかと思います。
編集部
つい先日も、ずいぶん大きな悪徳リフォーム業者が逮捕されましたよね。
稲 垣
埼玉県内で認知症の老姉妹が、16社もの悪徳業者に次々とほとんど不必要な5000万円ものリフォーム工事をされた事件ですね。
その結果 、蓄えを吐き出し、不足分として組まされたローンの信販会社からの申し立てにより、お金を掛けた自宅が競売に掛けられるということでした。
編集部
ああいった悪徳リフォーム業者は、都会では多いんでしょうね?
稲 垣
・・・・・・・・・・。勘違いされてますね。都会だけではありませんよ。
特に中越大震災以後の被災地は、そういった業者のいいターゲットになっているとみて間違いないです。
編集部
私たちのまわりでも悪徳リフォーム業者は存在すると?
稲 垣
いますよ。必ず。それもたくさん。悪徳リフォーム業者の多くは訪問リフォーム営業です。
ある日突然やってきて 『お宅の外壁は今すぐ塗装しておかないと大変なことになりますよ』『建物が地震で弱くなっているので補強しないと危ないですよ』『床下にシロアリがいます』『配水管に油が詰まって居るので掃除したほうが良い』『床下に湿気が溜まっているので換気扇を付けたほうが良い』等々。
 多くの業者が言うのは、『たまたま近くで工事をしていてお宅の屋根瓦が割れているのを見て、親方が教えて差し上げろと言われたのでお邪魔しました』的な、あくまでも“こちらは親切で伺いました”というスタンスでやってくることが多いようです。
また、『今やっておかないと取り返しの付かないことになる』などと不安を煽るのも手段ですよね。
高齢者世帯に行って、孫と大して変わらない年代の人間から「おじいちゃん、おばあちゃん」と親しげに話しかけられ、優しい言葉の一つでも掛けられればやっぱり気を許してしまうのも人情だと思うのです。
皆さんは悪徳リフォーム業者の営業と聞くとアンダーグラウンドと申しますか、別世界の人間だと思っているかもしれませんがまったく違います。
ごく普通に求人情報誌で求人もしていますし、多くは立派な肩書きをお持ちです。
編集部
悪徳リフォーム業者は『販売のプロ』だと聞いたことがあります。
そんな業者のお世話にならないためには何を気をつければいいのでしょうか?
また、見分け方みたいなものはあるのでしょうか?
稲 垣
そうです、彼らはプロです。ただし、プロはプロでもおっしゃる通り“販売”のプロ。
建築のプロではないんですね。
建築のプロでない者が『耐震補強しないと大変だ』と判るわけがないですよね。
既存の住宅の耐震診断は、建築のプロでも簡単な作業ではないのですから。
報道映像で床下におびただしい量の金物が取り付けられた家の映像をご覧になった方もいらっしゃると思いますが、あれは使い方、数量が間違っているだけで、あの金物自体は使い方を間違いさえしなければ非常に有効な金物なんです。
ああいった映像は金物メーカーさんにしてみれば甚だ迷惑な話だと思います。
私もあの映像を見て素朴な疑問が沸きました。『施工も建築素人なのではないのだろうか』と。
もし建築の知識が少しでもあるのならあんな金物の使い方は出来ないはずだと思ったのです(施工した人間に良心があるとの前提ですが)。
好ましくない業者はなくなりません。しかも、明日お宅にやってくるかもしれません。
とはいえ、健全に、真面目に、真摯にリフォーム工事を専業でされている業者さんもたくさんいらっしゃるわけですから見極めが必要です。
 気をつけて頂きたい点を列挙すると…
 
一人で決めないでください。
彼らがやってくるのは概ね昼間です。 お一人でご在宅の場合も多いと思います。 金額の大小に関らず一人で決めてしまい契約書にサインなどされない方がいいと思います。必ずご親族や御近所の方にご相談ください。
 
必ず連絡先を教えてもらってください。
できれば会社の電話番号だけでなく、本社の電話番号も知っておいた方がいいと思います。 おそらくは本社は県内ではない業者が多いはずですから。
 
契約の意思があるのであれば、必ず見積明細書をもらってください。
『何を何個付けるのか』『設備機器などの定価は書いてあるのか』   『どこまでが工事範囲なのか』等、一式いくらの見積や契約書では何をどのようにリフォームするのか(あるいはリフォームしたのか)がまったくわかりません。 その部分がわからなければ契約金額が妥当なのかさえ判断が付きません。これは新築工事の契約書にも同じことがいえるわけです。
稲 垣
訪問リフォームの場合、特定商取引法と言う法律の下で『法定の契約書面受領後8日間以内』なら契約を解除できます。 この制度をクーリングオフといいます。 お年寄りが契約してしまった場合などはこの制度を使えば契約解除はできます。 なので、工期の掛からない工事は契約の翌日施工とか工事を急ぐ場合がありますので、やはり契約は急がないことが肝心だと思います。
編集部
なんだか嫌な世の中ですねえ。
稲 垣
私はこういった被害を自己責任と切って捨ててしまうのはどうかと思うんですね。 後を絶たないリフォーム被害。これはもしかしたら建築業界全体の責任のような気がしてなりません。 お住まいについてどんな些細な不具合でも気軽に相談できる町内ご近所の建築屋がなくなっちゃったのかなあとも考えます。 それは昔と現代のご近所付き合いの変わり方にも起因するのかもしれませんが。 ある日突然やってきた人間に工事を任せる前に、知り合い、ご近所の大工さんに一言相談されれば事態はまったく違う方向に進むはずです。 どこの建築屋さんでも決して敷居が高いわけではありません。 診てもらったら工事をお願いしなければならないということもありません。 ご近所、知り合い、あるいは知り合いの知り合いでもいいと思うんです。 まずは設計事務所、工務店、大工さんにご相談ください。

今回、悪徳リフォーム業者逮捕と言う報道で一番迷惑しているのは他でもないリフォーム業界でしょう。
その中でも一番迷惑を被っているのは健全なリフォーム業者さんです。
リフォーム業者=悪徳業者のイメージが業者逮捕で決定付けられました。
けれど、そうではないんですよ。本当にまじめにリフォームを専業とされている方もいらっしゃいます。そういった方はリフォームを軽く考えてはいないんですね。
住宅のリフォームを一度でも経験したことがある業界の人間なら判ると思いますが、既存の住宅のリフォームは楽な仕事ではありません。
ある意味では新築より難しいかもしれません。リフォームはふんどしを締め直さないと取り掛かれない工事です。
題名の「おいしいリフォーム」と言うのは業者にとっての言葉ではなく、リフォームされる皆さんにとって、その工事で生活が新鮮で活気に満ち溢れたご満足のいくリフォーム工事であって欲しいと思いタイトルを付けさせていただきました。
編集部
簡単に考えない、簡単にサインしない。
その上で他の方々から話を聞いたほうがいいということですね。皆さんもお気をつけください。