記憶の棲み家〜リフォームの話

編集部
中越地震で被災された方の中からリフォームについてのお問い合わせを多数いただいているので、今回はリフォームの話をお願いします。
稲 垣
リフォームは和製英語で日本語ですね。 世界的には通用しない言葉です。 リメイクは造り替え、リボーンは生まれ変わり、リフォームはもともとフォーム(姿・形)なのかホーム(家)なのか……まあそんな話はどうでもいいとして、一般 的に呼ぶ「リフォーム」と営繕を混同されている方が多いように思います。
編集部
リフォームと営繕はどのように違うんですか?
稲 垣
営繕=修理と考えていただければわかりやすいと思いますが、たとえば今回の地震でずれた瓦を直すのに「リフォーム」と呼ぶ方は少ないですよね?  工事的には修理ですから。ですから同じようにキッチンが使いにくいから、お風呂が古いから、と言う理由で機器だけの入れ替えならそれはリニューアル=営繕です。
編集部
わかるようなわからないような……。
稲 垣
わかりやすく申しますと、全般的な建築的知識を持たなくてもできる工事がリニューアル=営繕で、建築の専門家が介在しないとできない工事がリフォーム。
編集部
……???
稲 垣
う〜ん…具体的にたとえますと……こういう言い方すると町の水道屋さんに怒られそうですが、キッチンやお風呂の機器の入れ替えなんかは水道屋さんでできます。 元々その道のプロですから。ホームセンターや電気屋さんでも機器の入れ替えならできますよね? リニューアルなら。 外壁の塗り替えだって近所の塗装屋さんにお願いすればきれいに塗り替えてくれます。 だけど、間取りを変えたい、二つの部屋を一つにしたい、増築したい、ついでに耐震補強したい、等々、構造を知る人間が介在しなければできない工事があります。 要は建物についてすべての知識を持っていなければできない「はず」の工事をリフォームと呼ぶのだと思います。 だって、いくらその道のプロでも水道屋さんや塗装屋さんに「この壁邪魔だから取りたいんだけど大丈夫かな?」って聞く人もいないでしょ?
編集部
だんだんわかってきました。けれどそれだと新築工事と変わらないのでは?
リニューアル=営繕 リフォーム
稲 垣
当たり前です。 自分が新築をお手伝いした家ならすべてわかりますが、そうでなければ表面 の仕上げ以外、私どもはわからないんです。 リフォームが手軽で簡単で安上りだと思われているのなら大間違いです。 リニューアルではなく、ある程度構造自体にも手を加えるようなリフォームは建築全般 の知識があるものでなければできないはずなんです。 皆さんの家に簡単に切り飛ばしていい柱なんか一本もないし、何の検討もないままに取り払っていい壁なんて絶対ないんです。 リフォームする時にご要望を叶えるにはどうしても抜かなくてはならない柱、壊さなければならない壁、いろんな場合が考えられます。 そんな時は建築的な計算ができて、同時に経験や知識のある人間でなければできないと断言します。私は家の「新築」をお手伝いできるだけの知識がなければリフォームなんてできないと思っていますから。 リフォームのほうが難しいですよ。
編集部
被災された方で建て替えか、リフォームか迷っておられる方も多いのですが。
稲 垣
「被災」された根本的な原因がどこなのかで大きく違ってくると思います。 たとえば地盤が傾いて、あるいは基礎が破断して、等の理由なら建て替えざるを得ないのかもしれません。 けれど、長く住まわれ、ご家族の歴史を閉じ込めた家を地震にあったからといってそう簡単に「解体」と言う結論は出せないですよね。 しかし、震災で家に不具合が起きたのであれば、その根本原因を直さなければなんの意味も持たないと思います。 であればなおさら建物の成り立ちすべてにおける知識が必要だとおわかりになっていただけるはずです。 もし、お悩みの方がいらっしゃればまず専門家に相談してみてください。 私の言う専門家は「設計事務所」または「有資格者のいる建築屋」です。 敷居が高いとは思わないでかまいません。 どこにご相談されても適切で丁寧なアドバイスが頂けると思います。
編集部
リフォームにも建築士の介在が必要だと?
稲 垣
そうです。ただし建築士の介在が必要なのは間取りを変えたり、増築したりする構造自体に手を加える場合ですが。 他は営繕の範ちゅうですのでそれぞれの道のプロにお願いすればきれいにリニューアルしていただけると思います。 リフォームと言えば数年前からテレビのリフォーム番組が高視聴率を上げているみたいですがあの内容すべてを本当の事だと思わないでくださいね。
編集部
それはどういった事でしょうか?
稲 垣
いきなりカケヤ(木製の大きなトンカチみたいなものですね)で壁を叩き壊したりしませんし、一級建築士の先生方が解体や搬入なんかしませんもん。 だいたい、専門家が介在している割には壁をたたき壊したり、柱を簡単に切り飛ばしてしまいすぎだと感じています。 きちんと検討されていると信じておりますが。
編集部
なるほど。テレビ用に作られたものだというわけですね。
稲 垣
値段も含めましてね(笑)。 あんな金額であれだけのリフォームができるのであれば私もお願いしたいくらいです。
編集部
最後に、題名の「記憶の棲み家」とはどういう意味でしょうか?
稲 垣
私はリフォームはもちろん、建て替えの場合でも前の家の材料を極力使いたいと考えています。 それはその家の歴史、言い替えれば記憶だと思っていますので。 たとえば旧家の床柱を上がりカマチに転用したり、欄間をふすまにはめ込んだり、おばあちゃんが裁縫に使っていた裁ち板で間接照明を作ってみたり。 それはリサイクルと言う意味合いも多少はあるのですが本当の意味は記憶を受け継ぐ家を造りたいという想いからです。それは建て替えでもリフォームでも変わりません。 リフォームをご計画中の皆様の「記憶」も受け継がれていくことを願います。 これはリフォームの話とは関係ないのですが少し気になっている事があります。
「瓦屋根」の事です。
震災で瓦の屋根は大きな被害を受け、いまだに雪の下にはブルーシートが張ってあるお宅も多くあると思います。
そして予想通りに言われ始めた「もう瓦なんか使えない」。
一般の方々の口から出るのならまだしも建築屋さんからも「瓦はもう駄 目。使えない」と言う言葉を聴いたときは正直びっくりしたとともに、落胆しました。
実際に聞き返すことはしませんでしたが、何を根拠に「瓦は駄目」なのか聞いてみたかったです。確かに瓦は金属屋根と比べれば重量 もあります。
重いということは地震での揺れには軽い材料よりは不利になります。
棟の瓦がずれたのは鉄筋等で補強されていないお宅ばかりです。
これは補強方法や瓦一枚一枚の取り付け方さえ改善してやれば簡単に解決できます。重いという事だけで「瓦はもう使えない」と言う発想なら嘆かわしいと思いませんか?
 その言葉を口にしたのは建築のプロなのです。
誤解を恐れずに言えば、重いから瓦は駄目だと本気で思っておられる「プロ」は屋根が重いのなら、それなりに荷重を計算して重さに耐え、また今回の震災程度で微動だにしない家を造ろうという考えにはいたらないのでしょうか。
屋根仕上げがある日、突如として金属屋根から瓦屋根に変更になるわけではありません。
あらかじめ予想できる重量に対応できないなら予告なしにやってくる地震になど対応できるわけがありません。私は瓦業者の回し者ではありませんが、瓦は大丈夫です。
日本の文化だとか大上段にかまえるつもりはありません。
当然計算すべき瓦屋根用の構造にすれば何の問題もないのです。
記憶を受け継ぐリフォーム
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