あなたらしく、私らしく…

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中越大震災の余震もようやく落ち着きを見せ始めました。
改めまして被災された方々には心からお見舞い申し上げます。
皆さんのお宅はどうでしたか? 全壊や半壊、一部損壊など被害は様々です。
また、「あたり一面家が傾いているのに、私の家だけなんともなくて逆に申し訳ない」とおっしゃるお客様もいらっしゃいます。
平均的な川東と川西の被害度は違いますし、隣同士でもまったく違う被災度に正直首を傾げたくなる場面 が何度もありました。
 私どもの業界では徐々に嫌な言葉が使われ始めています。
「震災特需」。
 公然とこの言葉を使う方々が悲しいくらい多いのです。建材メーカー、商社、そして建築屋。当然、建築あるいは土木はこれから忙しくなるでしょう。
けれど長岡市、あるいは周辺まで含めてもそれらに従事している技術者、職人さんの数が劇的に増えるわけではありません。
普通に考えれば供給を超える需要には対応しきれないはずなのです。
それを「特需」と言う言葉にしてしまう神経が私には理解できません。
その「特需」が震災という悲劇の上に成り立つわけですから。

 さて、それでも立ち止まってはいられません。これから家の建て直しをされる方、大規模リフォームをされる方、補修程度で済むお宅、家に関してはこれからお考えになられることと思います。
大地震があった直後ですから当たり前のことですが、耐震性を最重要視される方が多いのではないでしょうか?  それは私も大賛成です。家の最重要視するべきは耐震・耐久性だと何度も申し上げてまいりました。大賛成した上で今一度考えてみてください。
それ「のみ」の家でいいですか? 地震にさえ強ければそれでいいのでしょうか?
家には断熱性やハウスシック対策、他にも考えなければならない事柄はたくさんあります。
けれど、それら以前にもっと根っこの部分で皆さんらしい家はどんな家ですか?
 例えば、高齢のご夫婦が雪対策のためにマンションを買うというのも選択肢です。
すぐにでも不便な生活から脱却するために企画住宅を超突貫工事で建てるというのも選択肢です。
熟慮された上でその結論が皆さんの家族らしい家であれば、私ごときが申し上げることは何もありません。家は地震から命を守るためにのみあるのではなく、暑さ寒さから逃れるためのみにあるのでもありません。家の存在意義はその家が皆さんの家族そのものを表し、皆さんの気持ち、心、大袈裟に言えば魂が守られ、育まれ、抱擁されるものでなければならないと考えます。
それこそが家の基本、根っこの部分なのではないかと思います。
その上で耐震性や断熱性等の基本性能の話につながります。

「家」が『家族』になるということ

今回の震災で私の友人宅が全壊しました。
不幸中の幸い……と申していいのかもわかりませんが、彼女の嫁入り先の家はそろそろ建替え時期と考えていたそうです。
彼女の実家は長岡市内でもほとんど被害のない地域です。
家族とともに不便な避難所に避難していた友人に、「実家に避難させてもらったら?」と問いかけたところ、返ってきた彼女の返答に声が詰まりました。
「私なんか嫁でしかないけれど、もう住めなくなったけれど、この家から離れられない」。
 家が新しいとか、古いとか。あるいは暖かいとか寒いとか。
そんなことを超越した心からの、魂の言葉だと感じました。彼女にとって嫁入り先の家は、すでに「家」ではなく『家族』になっていたと感じました。
 建て替えを考えている方は特に、この大震災の経験を無駄にはしないで、そこからつながる想いを形にしてください。「そこ」とは、不便であったとしても以前暮らした家の記憶です。
皆さんには皆さんらしい、いつか「家族」と呼べる家を造っていただきたいと思います。
私は私らしく、自分の足元と技量を見つめ、私の範疇の中でのみお客様の「家族」造りのお手伝いをさせていただこうと思います。

 知人から「お前がまるごと生活情報に地震の事を書くとまた地震が起こるから二度と書くな」とお叱りをいただいているので地震については書きませんが、一言だけ。
すでに私どものお客様にはお伝えしてありますが、今回の震災において、最大震度5弱以上がすでに9回ありました。
有感地震では800回を超えています。皆様の家にもそれなりに影響は出ていると思います。
中越はこれから厳しい降雪期を迎えます。屋根に雪がたっぷりある時に、もし大きな余震でも来たら被害は本震より大きくなることは容易に想像できます。
気象庁が安全宣言を出せないでいる以上、もう二度と微塵の被害も出すことのないように、少なくともこの冬だけは“早めの雪下ろし”をお薦めいたします。

 7.13新潟豪雨。10.23新潟県中越大震災。県内が天災に見舞われた2004年がもうすぐ終わります。それらの天災から皆さんの地域が一日も早く元通 りに復興されるのを心よりお祈りするとともに、2005年が皆さんにとって良い年になりますように。

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