山の話

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※掲載している写真はすべてイメージです。

編集部
今回は山の話ということですが、住宅とどんな関連性があるのですか?
稲 垣
簡単に言うと、住宅に使う森林資源のお話です。日本で使用されている材木の多くは輸入に頼っています。アメリカ、カナダ、ロシア、ヨーロッパ、東南アジアはもちろん、最近ではアフリカ、南米大陸からも木材が輸入されています。そうした中、徐々にではありますが、材木輸入ダントツ第一位 の日本バッシングが始まろうとしているのです。
編集部
自国に潤沢な森林資源がありながら、他国の材料を買い集める日本の姿勢へのバッシングですね。
稲 垣
そう、自国の山はそのままで、他国の山を裸にしていくことへの国際的な批判です。林業関係者からの話ですと、伐採可能な国内の「植林」樹木のみで、1年間に建てられる日本の全住宅の材料は調達できるそうです。
編集部
問題は、日本に輸入される材木が伐採された山が、その後どうなっているかですよね。
稲 垣
アメリカやヨーロッパ等、先進国の山は「伐採から植林」の蘇生サイクルが確立していますが、東南アジア、アフリカ、ロシアなどの国々は、サイクル確立と言う点では疑問です。シベリアの樹木伐採や乱開発のために、永久凍土と呼ばれていた大地が、湿地あるいは沼へ姿を変えています。某東南アジアの国では違法伐採が後を絶たず、現在は宇宙から(衛星で)違法伐採の取り締まりを開始する国もあります。
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編集部
ある特定の樹種を伐採するために、何ヘクタールもの森林を違法で切り開き、荒廃していくという話を聞いたことがあります。
稲 垣
そういった場合は、違法な伐採ですから伐採後の植林などあろう訳がなく、山は甦ることはありません。
編集部
違法伐採された違法取引の材木が集まる国はここ日本ですよね。
稲 垣
現在の流通システムの中で、輸入の木材が一切なくなってしまったら、日本の住宅は成り立ちません。要は、輸入商社から私たち建築屋まで、皆で山を見る責任があるということなんだと思います。私の親しくさせていただいている材木輸入会社の姿勢は、輸入する材木の伐採後、その山の植林がすべて終えるまでは必ず社員を常駐させている会社があります。
編集部
では、身近なところで、新潟県産の材木はどうなのでしょう。
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稲 垣
新潟県の森林面積ってどれくらいあるかお分かりになりますか?
編集部
結構上位にランクされるでしょうね。
稲 垣
ヘクタールとかの単位で言われてもピンとこないと思いますが、47都道府県の中で上から5番目です。
編集部
それだけ林業も盛んだということですか?
稲 垣
林業の中にも色々種類がありまして、建築用の木材を取るのも林業、きのこ類を栽培するためのチップの生産も林業です。ちなみに「きのこ類生産のための林業」に限りますと長野県に次いで第2位 。森林組合の数は第7位。製材工場の数は全国第3位です。しかし、建築材料の生産高で言うと47都道府県の中間くらいでしょうか。
編集部
新潟県産の建築材料は、なぜ流通 量が少ないのですか?
稲 垣
新潟県産材は非常に高価なのです。それから、これはあくまでも私の主観ですが、県産材の材木には一抹の不安を覚えます。それは木材の含水率です。柱や梁といった構造材に使用される木材の含水率は16%〜上限20%くらいとされています。そのレベルでないと乾燥材とは呼べないのです。
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編集部
構造材が乾燥していないと、建てた後に材木がねじれたりして建物にゆがみが生じますから、含水率は重要ですよね。
稲 垣
県産材はこの乾燥度合いがまちまちで、含水率25%以上の物も流通 しています。地元の木を使う。それ自体は地産地消の意味からも大賛成です。けれど、それで建物に不具合が出てしまったら本末転倒な話です。
編集部
今度、稲垣建築事務所では、材木の産地表示を始めるそうですね。
稲 垣
はい、私どもは構造材を始め、内装材の無垢材まですべての材木の産地表示を始めます。地産地消は素晴らしい事ですが県産材にこだわるつもりはございません。けれど、もう少し大きな範囲で見た地産地消、基本的には国産材の活用を重点的に考えます。スーパーで売っている野菜のように、「○○町の○○さんが作った大根」のような表示はできないかもしれませんが。
編集部
少なくとも使用する材木が森林荒廃、環境破壊の一端になっていないことの裏付け、自信として産地の表示を始めるということなんですね。
稲 垣
それが、これからの私たち業界の大きな責任でもあると強く感じています。
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