日本の断熱住宅が地球を破壊する?

稲 垣
今、話題の映画「デイアフタートゥモロー」はご覧になりましたか? 
編集部
球温暖化を要因とする異常気象がもとで、地球全体が氷河期に入ってしまうという内容ですよね。
稲 垣
とてもリアルで恐ろしい映画でした。今回はそんな事態を引き起こす要因を、住宅という観点から探りたいと思います。
編集部
テーマは「断熱住宅が地球を破壊する」という、今までになくショッキングなものですね。
地球画像

※掲載している写真はすべてイメージです。

稲 垣
本題に入る前に、地球規模での大問題について説明します。ひとつが「オゾン層の破壊」、もうひとつが「地球温暖化」です
編集部
オゾン層というのは、地球の表面 を覆っていて、紫外線から生物を護る働きをしているんですよね。
稲 垣
そうです。オゾン層というのは地上から約50kmの成層圏にあって、太陽からの有害な紫外線B波が地上に到達する事を防いでいます。つまり、地球の鎧みたいな働きをしているんです。でも近年、フロンガス(正式にはクロロフルオロカーボン)により、地球の鎧であるオゾン層が破壊されています。
編集部
オゾン層が破壊されるというのは、鎧に穴が開くということですね。
稲 垣
鎧の穴はオゾンホールとなって、有害紫外線は地上まで到達します。地球への影響は有害紫外線による免疫力の低下、皮膚ガンの増加、動植物への影響、そして成層圏での大気変化の影響で地球上に天変地異が起こるとも言われています。
編集部
地球温暖化の問題も盛んに叫ばれていますよね。
稲 垣
地球の大気には二酸化炭素(CO2)などの温室効果 ガスが含まれます。地球の平均気温は約15度前後に保たれてきました。しかし、石油や石炭などの化石燃料の大量 消費、森林の大量破壊(木々による二酸化炭素分解が不能になるため)で、地球の平均気温は徐々に上昇しています。
荒れ地画像
編集部
温暖化の原因は人間ですよね。森林を無計画に伐採し、化石燃料を大量 消費し、自分たちの地球を滅ぼそうとしていることは嘆かわしいことです。
稲 垣
2100年には気温で最大6度、海面 は最大90cm上昇すると予想されています。温暖化を食いとめるために、世界規模で温室効果 ガスの放出削減に動いていて、1997年に京都で開かれた世界温暖化防止会議の京都議定書がその第一歩です。

住宅断熱材の地球への影響とは?

編集部
タイトルである「断熱住宅が地球を破壊する」とは、オゾン層破壊と地球温暖化にどのような関係があるのですか?
稲 垣
ズバリ「断熱材」です。それもグラスウールやロックウールの綿状断熱材ではなく、板状の断熱材や現場で吹付けするウレタン系の断熱材です。
編集部
専門的で解かりにくそうなお話ですね。
稲 垣
でも、大切なことなので、少し我慢して聞いてください。現在生産されている物はフロンではなく代替フロンによる発泡方法です。でも、かつて生産されたものはフロンで発泡しています。厚さ50mmで、畳1枚分の押出し法ポリスチレンフォームに、どれくらいのフロンが入っているか想像できますか?
編集部
正直、想像もつきません。
稲 垣
たった1枚で、家庭用大型冷蔵庫の冷媒として使用されるフロンの約3倍です。40坪ほどの家の断熱材すべてがこれだとしたら、おおよそ100〜150枚は使用されています。
編集部
1軒の家で、冷蔵庫300〜450台分ですね。
稲 垣
家電リサイクル法施行後、冷蔵庫やエアコンからはフロンを抜き出して処分しなければならない事になっています。けれど、断熱材からフロンを回収しなければならないとは言われていませんし、回収する方法もありません。リサイクルは元々できない品物なので、不用になれば焼却処分しか方法はありません。焼却すれば抜け出したフロンは必ずオゾン層に達し、破壊します。
編集部
「今は代替フロンだから大丈夫」と言う声も聞こえてきそうですが。
稲 垣
代替フロンは確かにオゾン層を破壊しない代わりに、地球温暖化物質は二酸化炭素の約900倍です。硬質発泡ウレタンフォームに至っては、製品の状態から徐々にフロンが抜け出します。
編集部
数字を聞いているだけで恐ろしくなってきますね。
稲 垣
現在、外断熱の住宅においての主流は「フェノール樹脂系断熱材」です。夢の断熱材とまで言われました。フロンや代替フロンは使っていません。しかし、その物質性能上焼却処分は難しく、リサイクル方法も現在のところまったくありません。また、他の断熱材に比べるとホルムアルデヒド濃度が高い、収縮率が高い、水(湿気)に弱いという欠点があります。これは実際に使用されている業者側も良く知らないらしいです。
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編集部
オゾン層を破壊する、地球温暖化に拍車を掛ける、リサイクルできないとなると、確実に子どもや孫の代に負の遺産を残す事にはならないでしょうか? 自分の家一軒くらい大丈夫なんて言ってられませんね。
稲 垣
正直に申し上げます。私がこれらを使用したことがないと言えば嘘になります。押出し法ポリスチレンフォームも硬質発泡ウレタンフォームもフェノール樹脂系断熱材も使用しました。私の勉強不足です。マイナスの部分を調べもせずに使用していました。自然素材を使い、自然塗料を使い「健康住宅」などと言っておりましたが、環境まで配慮した本当の意味の「エコ」住宅ではありませんでした。決して大袈裟ではなく、私自身が地球の事を考えていませんでした。
編集部
では、これからどうすればいいのですか? 選択肢はそれほど多くはないように思います。
稲 垣
選択肢は2つあります。ひとつめが「セルローズファイバー断熱材(吹き込み施工)」です。これは古新聞を溶かしてリサイクルし、ホウ酸で難燃化した天然木質繊維系の断熱材で、吹き込み施工です。他の断熱材が持つ問題点のほとんどを解決しますが、@吹き込み方法なので壁に施工した場合将来的に沈下が起こる可能性がある。Aホウ酸や新聞のインクを微量 ながら含有しているので極まれにアレルギー症状を起こす方がいる。B非常に高価という問題点もあります。 ふたつめの選択肢が「ビーズ法ポリスチレンフォーム(板状断熱材)」です。見た目は押出し法ポリスチレンフォームとほとんど同じですが、製造過程の発泡方法が水蒸気発泡であり環境性は大変良いのが特徴です。焼却してもフロン、代替フロンが未使用のためオゾン層破壊には繋がりません。現時点でも約60%ほどがリサイクルできていて、水(湿気)にも強いのです。けれどやはり@断熱性能が他よりやや劣るため、断熱材の厚さが厚くなる。A極微量 (もちろん基準値以下ですが)であるがキシレン、トルエンの揮発性化学物質を含んでいる、という問題点があります。
編集部
社長はどちらを選択されるのですか?
稲 垣
私はふたつめの「ビーズ法ポリスチレンフォーム」を選択することにしました。オゾン層を破壊せず、地球温暖化に作用する物質を含まず、既にリサイクル方法が確立しているからです。多少断熱材の厚さが厚くなったとしても、他の断熱材と同等の性能を保持させるのは可能です。
編集部
今回は少し難しいお話になりましたが、普段は全く考えもしない断熱材と地球環境の関係を知ることができて良かったと思います。ありがとうございました。
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